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さて新大阪に到着して私たちは新幹線から降りる。
「はーやっと着いたね」
固まりきった背中を伸ばしてみれば筋肉が伸びる感覚がする。
「これからどこ行くの?」
右も左も分からない勇利に問われる。
「とりあえず、在来線に乗って大阪駅まで出てそこから私鉄に乗り換えかな。30分ぐらいで仕事場に着くと思うよ」
時間もないので先々行こう。
「用事も済めばその分いっぱい観光できるよ」
私を先頭にして二人はぞろぞろ着いてくる。
「ここがオーサカかードートンボリはここから近い?」
観光が先ではないのに既に観光の話をヴィクトルはしている。
「道頓堀に行くにしてもまずは大阪駅に出ないとどこにも行けないよ」
とりあえず私たちは新大阪駅を後にした。
「着いたよ」
仕事場に知り合いを連れてくるのは何か変な感覚がある。
彼らは知り合いと言うより、選手とそのコーチなので、仕事と言えば仕事なのだが、こちらが家族経営なので家族に私の近況を二人、特にヴィクトルが話さないかが心配という面もある。
私は重たく息を吐き、重く感じる仕事場のドアを押す。
「ただいまー」
すると手前でミシンを踏んでいる祖父が話しかけてくれる。
奥の部屋に仮縫いした衣装が置いてあるそうだ。
私は糸クズだらけの工場に躊躇なく足を踏み入れる。
後ろを振り向くと勇利とヴィクトルが祖父や祖母に挨拶をしていた。
なんともこっぱずかしい。
「ほら、二人とも早く来て!」
部屋に入るとトルソーに着せられていた仮縫い衣装が置いてあった。
「わぁ、」
勇利が嬉しそうに感嘆の声を上げる。
「仮のものだから生地が違うんだけど羽織って見てくれる?そこから衣装の丈の長さとか調整するから」
羽織ってみてくれた勇利の姿を見て私は重く見えるような衣装の修正点をメモに書き出してゆく。
「……あと少し後ろの丈を詰めるか」
「このジャケット丈が前下がりになってるね」
良いの?とヴィクトルは聞いてくる。
「うん。勇利のヒップライン個人的に好みだから見せて行こうと思って」
そう言うと勇利が顔を赤らめる。
「自身があるところは見せつけていかないと、ね?」
照れるところではないと私は彼にアピールポイントは出して行こうと言うが妙に納得のいかないような、恥ずかしさが抜けない表情をされた。
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作者名:かなぁ | 作成日時:2016年11月25日 14時