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三姉妹の言葉を待っていたのだが勇利が口を開く。
「調整失敗で11位ですかね…」
自己管理してどこまで自分を仕上げるかなどの目標が立てられなかったのか、なんともメンタルの弱い選手がしそうな失敗……
今年の勇利は予選からの出場になるのか。
スケート経験はないもの選手権大会でよくあるシステムをカタチだけ理解する。
「じゃあ勇利の初戦はどこになるの?」
無知な私は横にいた優子さんに聞く。
「えーっと、シーズン初戦は9月の中四国九州選手権大会!まさに凱旋試合!」
国内なら楽勝だと言う西郡家の旦那さんだが、そこに三姉妹が口を挟む。
「でも福岡の南くんが出るよ」
君付けされると言うことは若い子なのだろう。
どんな子なのだろうかと思っている私に解説をしてくれる三姉妹。
「全日本で勇利に勝って若手No.1って言われてる九州のホープ南健次郎!」
ふむふむ、去年、勇利はその子に負けちゃったんだね。
勇利以上の演技をする人がいるのかと思い、スケート界は広いのだと感じる。
「Aー!この人だよ!」
ヴィクトルの横でスマホをいじる三姉妹は私を呼ぶ。
私はヴィクトルの横に座り、その南くんと呼ばれる子の滑りを動画で見る。
ヴィクトルも私の肩に顎を乗せてそこから顔を出し見てくる。
「へー可愛らしい子だね」
ヴィクトルは無言でそれを見ている。
勇利ほどではないと思って見ているのだろうか。
その日の報告会はお開きになり、寝る前に私はメンズファッション誌を部屋のソファーの上で読み散らかしている。
「彼氏へのプレゼントでも探してるの?」
面倒な絡みをするヴィクトルは私の横に座りテーブルの上に乱雑に置かれている雑誌をパラパラとめくる。
「そーだよ。どうしても男っぽい服ってのが分からないから雑誌見て研究してるの」
今日のことで一層いい衣装を作ろうと躍起になっていた。
「それはいいけどもう寝ない?俺、もう眠いよ」
そう言い私の方にヴィクトルは雪崩れてくる。
確かにあまり考えすぎも良くない。
私は雑誌を閉じてテーブルの上に投げ置く。
「できれば片付けてからベッドに入って欲しかったな」
私が投げ置いた雑誌をご丁寧にヴィクトルは下のラックに入れてくれる。
「あ、ごめん。次からは気をつけるよ」
「俺に片付けさせるのなんて君ぐらいだよ」
私は部屋の明かりを落とした。
「ヴィクトルおやすみ」
「うん。おやすみA」
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作者名:かなぁ | 作成日時:2016年11月25日 14時