Eternal Snow (ページ1)

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明けない夜はないというけれど (mmkj) ページ1

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精神疾患のある橙 × 恋人の黒
( Ren side )

「 …… こうじ？」

また、だ。

割れたお皿やグラス、薙ぎ倒された家具たち、本棚から出されたページの破れた本。
散らばった錠剤、危険だからと取り上げたはずのハサミやカッター。

色んなものが散乱する部屋。

その真ん中に裸足でぺたんと座って、光のない目で窓の外の暗闇を見つめる、恋人。

…… 恋人、なのかも分からない。

最後に「好きだ」と言われたのはいつだろう。

この散らかった部屋を見て、何も思わなくなってしまったのはいつからだろう。

怒りも悲しみもせずに、冷静に見ることができるようになったのは。

「康二、帰るの遅くなっちゃってごめんね。ごめん。」

「 ……れんっ、」

春が近づいているとはいえ、暖房の付いていない夜の部屋は冷たくて、体は冷え切っている。

　

「うん、そうだよ。れん。ただいま、康二。」

「 ……れんっ、ごめん、ごめんなさい、っ、… お、おれ、またっ」

「 …… 大丈夫。ね、寒かったでしょ。」

あたためるように腕の中に入れて
ようやく彼を取り戻す。

…… ただ、それは一瞬のこと。

「 …… れん、れん、っ、んっ、はひゅっ、はぁっ」

抱き締めた腕の中でも、震えて、苦しげに息をして、闇の中に沈んでしまう。

「 …… だいじょうぶ、だいじょうぶ。」

何が大丈夫なんだろう、何かに頼らなければ、
俺は彼を安心させられないのに。

「れん、しにたぃ、ころして、なぁ、ころしてっ」

混乱する恋人は、俺の手をとって自分の首に当てる。

… 絞めてくれと言うように。

大好きだった澄んだ目は、もう俺なんて映らないぐらいに濁ってしまっていた。

そんな康二を見る度に、何か大事なものを吸い取られるような感覚に陥る。

きっともう疲れてしまったんだと思う。

康二に「生きろ」と言い続けることに。

どうしても生きて欲しかったはずなのに、

考えすぎて、どうして生きてほしかったのか分からなくなった。

だからもういいかな、なんて思ってしまった。

……ふたりで逃げてしまおうか。現実から。

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