［HP]繊翳を捉える［セブルススネイプ］ (ページ6)

今日:8 hit、昨日:16 hit、合計:3,722 hit

家と家族ページ6

FromA
今日はキングスクロス駅へ向かう…そうつまり、私は夏休みに終わりを告げないといけないらしい
自分のトランクを部屋から運び出して、それだけでほぼ空っぽになる部屋を見て、少し寂しく思った
こうやって数ヶ月を一緒に過ごしてはいても、やはり私はこの家の『家族』にはなれないんだろう、と、3人には申し訳ないが思ってしまった
でも仕方ない…私はそもそもが暗い所で生きてきた人間だから、彼らの様な…元々魔法や自分の将来について知り、考え、親と話してきた人達と私と同じはずがない
それに…『これ』がないと、私は彼らと『普通に』過ごすこともできなかったかもしれない…

「荷物は纏まったかな」
「あ、はい」
いつの間にやらドアのところに立っていたおじさんに声を掛けられる
「かなりスッキリしたね」
「そう、ですね」
スッキリし過ぎなくらいに物がなくなった部屋を見て、私の本拠地はここではなくホグワーツなんだなとしみじみしていた私に、少し追い討ちをかけられた気分だ

そんなことは梅雨知らず、刻一刻と電車の時間は迫っていた
今日は車で駅まで行けるとの事だったが、道の混雑も予想できないし、そんなに悠長にしている時間は残っていなかった
おじさんは魔法で私のトランクを運び出し、おばさんとお姉ちゃんはいつもより少しマグルっぽい格好で玄関に立っている

「貴女の出発に立ち会えてよかったわ」
駅のホームでそう言う彼女は本当のお姉ちゃんであるかのような優しい顔でこちらを見る
こんな立派な姉など居なかったはずだったのになぁ、と思っていると、おばさんに抱きしめられた
「貴女、なんて顔してるの…」
「え、私…そんな…」
なにか失礼な感情が出てしまっていただろうか…
本当の家族とか何とか思っていた自分が一気に恥ずかしくなる
彼らは私を養ってくれていて、それだけで十分ありがたいはずなのに…一年で私はどれだけ無恥になったのかと自分を責めたが、おばさんの言いたいことは違ったようだ
「また会えるんだから、そんなに辛そうな顔しないで」
…あぁ、やはりこの人達は、どうしようもなく私と違って、本当に優しいんだな…そんな事を考えながらでも、3人の腕の温もりは心地の良い物だった

汽笛に急かされ、やっと乗車口に立った
「じゃあ、またね」
そう言う私に手を振る家族がいる
3人の立派な魔法使い達だ
私もそうならないとな、と、改めてしっかりと胸に刻み、私は今日座る席を探した