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「しかし、今更ながらダイニングの照明を暖色にしたのは正解でしたね。料理が美味そうに見える」

「ええー?」



彼女が眉根を寄せて非難の声をあげる。意識しているのかいないのか、こちらに身を乗り出すものだから白いニットの胸元が緩んで中が見えてしまいそうだ。



「ひどくないですか?なにその照明のおかげで美味しそうに見えてるみたいな言い方!」

「はは、もちろん嘘ですよ」

「あ、嘘ですか…なんだ…」

「というのも嘘ですけど」

「え?…てことは嘘が嘘で…ちょっと!」



咎めるような目で見られて、小生はこみあげる笑いをこらえようともせずに吐きだした。つられて彼女も笑いだす。



ここ数週間は新作の長編小説を仕上げるため、書斎に缶詰になっていたのだ。こうして彼女と直接会って話をするのもずいぶん久方ぶりのことのように思える。もう寒い季節になったからとストーブを点けていたが、今はまだ必要ないかもしれないと思った。

それにしても、改めて彼女を揶揄うのは楽しい。口を尖らせてむっとした顔をしながら抗議してくる姿は、さながら反抗期の若鳥のようである。

出来心ゆえではない。込めたのは親愛の念だ。





「僕は明日、アメリカに出立するからね。日本にいるうちに美味しい料理を食べることができて、幸せだよ」





もちろん、それは小生が彼女に向けてついた嘘だった。

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なぎさ(プロフ) - いちごって美味しいよねさん» 初めまして、コメントありがとうございます。夢野先生はどのような文章を書くのかとひたすら考えながら書いたので、そう言っていただけて嬉しいです! (2019年2月20日 10時) (レス) id: 2a6bd4d84b (このIDを非表示/違反報告)
いちごって美味しいよね - とっても面白かったです!流れる様に自然に紡がれている文章が、自然に幻太郎さんを思い起こさせてくれました!!またなぎささんの書く幻太郎さんに会いたいです(*^^*) (2019年1月10日 1時) (レス) id: e4cb51c86f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なぎさ | 作成日時:2018年11月27日 17時

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