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第30話 雪咲 藍 ページ31

……………正直、彼を殺すつもりは全くなかった。




ただ、「まって!」と指示した相手が私の予想と違っていたから驚いただけだ。


私の予想ではそろそろ鏡華さんが、止めなさいと止めに入るだろうと考えていた。


だが、私を制止させた声は意外な人物だった。

間違える訳がない。

師匠だ。

命を狙われてもなお、そのように他人に優しく出来るのは師匠の根の優しさなのだろう。


過去の影響により、私はまだ感情が完璧ではないのだ。

だから感情の昂りがまれに不安定になる。

私の優しさはおそらく完璧ではない。

中途半端な優しさだから殺すことをためらってしまう。


私は師匠にまだまだ見習うところがたくさんある。
それは体術の技術だけではないのだろう。








結果、私は彼との勝負に圧勝した。


……ならば
私は彼に問いかけてみても良いだろうか。

彼だから、彼じゃなければ聞こうとは思わなかっただろう。

過去の自分と勝手に重ねてしまったからこそ、聞いてみたかったのだろう。


まだ、彼は少し感情が荒ぶっている。

ならば今度、会えた時に聞いてみようと思った。



“彼が世界を嫌う理由”




きっと悪い人ではないのだ。

彼のこころに手をさしのべてくれる人がいなかったのだ。

寂しかったのだろう。

だからこれまでの道を少し間違えてしまったのだ。

少し、私にも理解できる感情がある。

なら、手をさしのべるのは私でもいいのではないか。

私は独りの檻の中から優しい人達が連れ出してくれた。

なら、次は私が助ける番だ。


また、新たな決意が芽生えた。




さっきの師匠の爆弾発言には驚いたが、同時に師匠らしいとも感じた。


なら、師匠についていくのは当たり前だ。

それに師匠を苦しめた者を弟子としては許せる訳がない。

「………私もそいつに、一矢報わせたいです。」




なんだかんだで話がまとまり始まった。


今の冷静を取り戻した彼の瞳はとても綺麗で美しかった。
それに劣らない端正な顔立ち。
今の方が全然かっこいいと思った。


立ち上がった彼に言う。
一応、今日が初対面の相手だ。

人見知りの私は緊張してきた。

緊張を紛らわすために大きく息を吸った。


「……ふふ、今の瞳の方が素敵です。
あ、……わ、私はゆ、雪咲藍…です!
……貴方の名前も聞かせてください。」

第31話 音魅→←第29話 早乙女いのり



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悪歌 - 更新させていただきました。 (2019年1月29日 22時) (レス) id: 4f8094e67d (このIDを非表示/違反報告)
ユキノシタ(プロフ) - 神崎アリスさん» 了解です (2019年1月29日 21時) (レス) id: 975ff33ffa (このIDを非表示/違反報告)
悪歌 - 更新させていただきます (2019年1月29日 20時) (レス) id: 4f8094e67d (このIDを非表示/違反報告)
神崎アリス(プロフ) - ユキノシタさん» あ!はい!いいですよー!ただ…夏海のプロフの所でやりませんか?ここでは皆さんにも迷惑がかかるので… (2018年11月17日 20時) (レス) id: 532eff0a36 (このIDを非表示/違反報告)
ユキノシタ(プロフ) - 神崎アリスさん» あの、すみません。質問なんですがいいですか? (2018年11月17日 16時) (レス) id: e6e4f6b7c0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夢沢夏美 x他5人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年2月13日 21時

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