歌が、三曲 ページ5
土方
その日、夕食のときに隊士皆がテレビに食い入って見ていた。
本当は士道不覚悟で切腹させたい所だが、近藤さんですらも見ているから出来なかった。
「さっきから何見てんだ?食い入って見てるが……」
「ホラ!今巷で噂の歌手がテレビで出てるんだよ!美人で歌上手くて、感動する歌なんだよな……!」
この人だよ!とゴリ((ry
近藤さんにテレビを見せてもらうと、
【たとえ姿が変わっていたとしても。
心まで変わることは無い。
あなたが気づいていなくても。
私はそれで幸せだから。】
オレンジ髪の、一人の女が悲しげに歌を歌っていた。
テロップには椿神乃、と出ていて、曲は夢風華と言うらしい。
「まァ……下手じゃあねェな。」
「素直になりなせェよ。綺麗じゃありやせんか。」
「んだと総悟(怒)」
後ろからひょっこり現れた総悟にキレつつ、テレビに目線を戻す。
【私は忘れない。
あなたと歩めたこの道を。
あなたに恋できた、
私は幸せ者だ。】
何故だろう。何故、このフレーズを歌い上げた後から、俺は……アイツを……ミツバを思い出していた。
きっかけなんて無かったのに。歌の力というやつなのか……?
「トシ?どうした?
辛そうな面して」
「あ、いや……なんでもねェ。気にすんな」
場が悪くなりそうだったから、その場から離れた。
こんな顔、誰にも見せたくねェ。泣きっ面なんざ。
26人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ