【ノラガミ】妖少女は夢を見る (ページ36)

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禊ページ36

随分と無茶をする！開口一番に説教を浴びせられ萎縮した。

「君は死に急いででもいるのか！？」
「す、すいません……。」

気圧されながら全てのわけを話す。彼は苦い顔をしていた。

「やはりあの小僧を手離さなかったわけか。」

やれやれと歩き出した背中に着いていく。私はずっと、口を結んでいた。

「禊を行うのは君と、僕と、大黒か。」
「いいえ。」
「は？」
「私は、参加致しません。」
「何故だ！命を省みずこんなところまで来て、それなのに何故君がやらない！」

前髪の隙間から覗く月色の瞳が射抜くように見上げる。兆麻と呼ばれていた青年が少したじろいだように見えた。

「私が出来損ないだからよ。」

歪んだ笑み、悔しくて堪らない。出来ることなら私が救いたかった。

「だから、貴方に助けて貰いたいのです、兆麻様。」

不意に、頬を撫でられる。

「、？？」
「僕には夜トに借りがある。勿論出来ることはするつもりだ。……それに、君への興味が湧いた。」

小さく笑ったその顔に何となく胸が締め付けられる。

「(綺麗な顔の人はどんな顔をしていても綺麗だわ……。)」

するりと手を離して再び歩き出した背中を薄ぼんやりと追って、考えた。
禊、それが出来ない私はとうとう何も隠し立てが出来ない状況だ。

「……兆麻か！夜トはお前んところの仇じゃないのか？」
「夜トには借りがあるんでね。それに、彼女が命懸けで呼びに来たものだから。」
「A！貴女はどうして禊には参加しないの？！」

「真喩ちゃんごめんね、私じゃ駄目なの。……さあ、始めましょう皆様。」

雪音くんの手をとって、深く深く頭を下げる。ここから先、私に出来ることはない。

捲り上げた服。背中に蠢く妖に雪音くんは喚いたが、もう誰も言葉を発さなかった。

引いた一線は雪音くんを閉じ込める。

「ああ"あ"！！！！！！」

苦痛に悲鳴を上げた幼い体を見つめた。

禊とは身を削ぐこと。始めたら途中でやめるわけにはいかないもの。

雪音くんが自分の罪を懺悔しない限り、終わらない。

「何をしたか吐け雪音。」
「あ"あ、うるさい、！」

怯える雪音くんは、妖に転じようとしている。

「ぅ、」

夜ト様の体に苦痛が増していく。

「俺は何も悪くない！っあいつらには全部あるのに、俺には何もない！皆俺みたいになればいい！」

これは生きたいと願った、あどけない子供の主張だ。