渚のエトランゼ Ⅱ (ページ25)

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檜山「嘘でも、試す価値はあるよな…」

嘘でも俺には害がない。ちょっと信じるぐらいバチは当たらない

そう自分に言い聞かせ、ふぅ…と軽く深呼吸した

俺が戻りたいと思うのはあの時、Aちゃんが生きていた夏だ

…でも、本当に良いんだろうか。なんで俺のところに来たんだろう。本来は竜生のところに行くべきものなのに

檜山「…これも後悔ってことか、」

あの時、竜生がいるからと一歩引いた後悔が心の奥底に眠っていたのかもしれない

それも含めて後悔がない選択をしろってことなんだと解釈して俺は目を閉じた

檜山「…8年前のAちゃんが生きてた夏まで」

砂時計をひっくり返したけど、体感的には何もない

なんだ。やっぱり嘘か、ちょっと不思議な体験をしたな…と思って目を開けた

檜山「は…なんでここ、嶺亜くんが貸してくれてた」

目を開けるとそこは何年も前に暮らしていた見慣れた光景

家具の配置や匂い、騒がしさまで完全にそのままで…

檜山「本当に、戻った…？」

現実味がない。だけど確かに戻っている

不思議な出来事を消化出来ずにいると、バンッ！と扉が開く

黒田「聞いてよー」

檜山「おおっ、な、なに？」

黒田「嶺亜くんが空き部屋に人が来るらしいから掃除しとけって」

この会話…あの時も確かにした。本当に、過去に戻ってる