74話『心』 ページ24
A・・・・
お前の笑顔。
涙。
深い色の瞳、心地よい声・・・
何度も重ねた柔らかな唇。
風になびく艶やかな髪。
この腕に強く抱きしめた、お前の温もり・・・
大切なものを・・・
愛する者がいるということが、
失うことへの恐れが、弱さを生むんじゃねぇか・・・と。
閉ざされていた門が、ゆっくりと開いていく。
壁の向こうに果てしなく続く草原に、朝の光が降り注いでいた。
「・・・・違うな」
「え?何か言った?リヴァイ」
「いや。・・・おい、ハンジよ・・。生きて戻るぞ。必ずな・・・」
「・・・ああ!生きて帰って来よう!!」
愛馬と共に門を潜り抜ける。
髪に、頰に感じる壁外の澄み切った空気。
俺は空を仰ぐ。
淀みのない抜けるような青空に、淡く白い下弦の月が浮いていた。
なぁ・・・A。
お前も今・・・同じ空を見ているのか・・・?
待っていてくれ・・・ーー
* * * * * * * * * * * *
門の向こうに消えていく、あなたの背中を見送った。
自由の翼を背負った、その背中。
憧れていたあの時と同じように。
無事に帰って来るよう、祈りを捧げながら。
だけど、あの時とは違う。
あなたは私の心に・・・すぐ側に居てくれる。
リヴァイも私の愛を感じてくれている。
手のひらをギュッと胸に押し当てた。
目を閉じると、鮮やかに浮かぶあなたの姿。
私を見つめる、強くも・・切なくも見えるその瞳。
意志を感じる、落ち着いた声。
さらり・・と風に揺れる髪。
何度も重ねた唇の感触・・・
力強く温かな腕の中・・・・
私は踵を返し駆け出した。
息を弾ませて走る。
風を感じながら、あの場所へと・・・ーー
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ああ - ドキドキがとまりませんでした〜 (9月16日 22時) (レス) @page28 id: 951a2a07c6 (このIDを非表示/違反報告)
じっくりコトコト - 兵長と一般人の恋愛は一味違っていて、とてもドキドキしました!一般人に見せる兵長の優しい顔、すてきだろうなぁと想像しながら読み進めました! (2021年1月13日 16時) (レス) id: 693713d422 (このIDを非表示/違反報告)
りぃまーる - 泣いてしまいました。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月21日 14時) (レス) id: a3334f2d39 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - サロメさん» サロメさん、コメントありがとうございます!初めて書いたもので恥ずかしいのですが、温かい言葉を頂き、とっても嬉しいです(;▽;) (2017年10月1日 1時) (レス) id: de23ec7cfd (このIDを非表示/違反報告)
サロメ - コメント失礼します!とても優しい話で、久々に読みきった時の喜びと悲しさが大きかったです。素敵な話をありがとうございます。 (2017年10月1日 0時) (レス) id: 657e6fdf88 (このIDを非表示/違反報告)
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