72話『一生を捧げる』 ページ22
時が・・・ゆっくりとその流れを止めた。
私の意識と高鳴る鼓動だけ残して。
『嫁ぎに来い・・・ーー』
彼の言葉を、その意味を心の中で繰り返し
何度も。
何度も・・・・。
遠い存在だった憧れの人。
憧れは恋へと姿を変え・・・・
あなたは私に、愛し愛される幸せを与えてくれた。
望んではいけない未来の形。
それでも充分だと・・・そう思っていたはずだった。
ーーひとすじの涙が静かに頰を伝い、再び時が緩やかに流れ始める。
あなたの穏やかで真っ直ぐな瞳が私を映し、答えを待ってくれていた。
「・・・リヴァイ」
抱きしめてくれている、力強く温かな腕の中。
愛するあなたの名を呼び、その瞳を見つめ返す。
「私にも約束させて・・・。私は愛するあなたに、この一生を捧げます。幸せな時も、つらい時も、悲しい時も・・・どんな時だって、ずっとあなたの隣に居る・・・・ーーリヴァイ・・ッ・・・愛してる・・・!愛してる・・・・」
「・・・俺もお前を愛している。一生離さねぇ・・・」
大きく頷く私の瞳から、大粒の涙がぽろぽろと溢れ落ちる。
リヴァイは私の頰をふわりと両手で包み込み、柔らかな笑みを浮かべた。
「A・・・」
私の名を囁く、愛しいあなたの声。
親指で涙の跡を優しく拭い・・・・
縮まる距離に胸を高鳴らせ、瞳を伏せる。
重なる・・・唇・・・ーー
待ち焦がれた、あなたの感触。
あなたの吐息を、柔らかさを感じながら、私は胸いっぱいに広がっていく幸せを噛みしめた。
会えなかった時を埋めるような、甘く・・・長いキス。
やがて・・・
優しい夜風が、二人の間を吹き抜ける。
「・・・・A。お前の部屋に・・行かねぇか・・・?」
ぽつりと呟く彼の声に、私は火照った頰をたくましい胸板に寄せた。
「うん・・・でも、明日は・・・」
「・・・このまま戻れねぇだろ・・・ーー馬鹿」
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ああ - ドキドキがとまりませんでした〜 (9月16日 22時) (レス) @page28 id: 951a2a07c6 (このIDを非表示/違反報告)
じっくりコトコト - 兵長と一般人の恋愛は一味違っていて、とてもドキドキしました!一般人に見せる兵長の優しい顔、すてきだろうなぁと想像しながら読み進めました! (2021年1月13日 16時) (レス) id: 693713d422 (このIDを非表示/違反報告)
りぃまーる - 泣いてしまいました。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月21日 14時) (レス) id: a3334f2d39 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - サロメさん» サロメさん、コメントありがとうございます!初めて書いたもので恥ずかしいのですが、温かい言葉を頂き、とっても嬉しいです(;▽;) (2017年10月1日 1時) (レス) id: de23ec7cfd (このIDを非表示/違反報告)
サロメ - コメント失礼します!とても優しい話で、久々に読みきった時の喜びと悲しさが大きかったです。素敵な話をありがとうございます。 (2017年10月1日 0時) (レス) id: 657e6fdf88 (このIDを非表示/違反報告)
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