６９話『星の囁き』 ページ19
ほとんど無言のまま、寄り添い歩いた。
だけどその静かな時間は、会えなかった時を埋めるのに必要な気がして・・・
私が彼を見つめていると、ふとその視線に気づきこちらを向くリヴァイ。
何も言わず繋いだ手を握りしめ、微笑みかけてくれるその姿に、変わらない彼の優しさを感じた。
歩みを止め、右手に佇む建物を見上げるリヴァイ。
私もそれにならって視線を上げる。
時計塔・・・
そこには使われなくなった時計塔がそびえ建っていた。
白っぽい石造りの塔。
天辺には動きを止めて幾年も経つ、文字盤が見える。
「・・・登るぞ」
手を引かれ、入り口へ向かう。
封鎖されているわけではないようで、木の杭を外し扉を開くリヴァイ。
「足元・・気をつけろよ」
「うん」
中は螺旋状の階段が上へと続き、所々に石をくり抜いた小窓がある。
その窓から射し込む僅かな月明かりを頼りに、私達は上へと階段を登った。
どうしてここへ？とは聞かなかった。
きっと一番上で彼が答えをくれる・・・そう思ったから。
最上階へ辿り着くと、そこには円形の空間があった。
時計を動かしていたであろう、大小の歯車。
それを調整する工具類が、木箱に入って置かれている。
小さな革張りの椅子が一脚。
小窓が多く、射し込む月明かりだけでも充分様子が伺えた。
彼の表情も・・・。
鼓動が・・・速くなっていくのを感じる。
私を真っ直ぐに見つめる、深い色の瞳。
時折吹き込む穏やかな風にさらりとなびく黒髪。
胸に手のひらをそっと当てて、彼の眼差し受け止めた。
「・・・A、覚えているか？・・・お前が森で教えてくれた場所の事だ」
「うん・・・覚えてる。私のお気に入りの場所。リヴァイに見せたくて・・・あなたへの気持ちを伝えたくて」
「そうだ」
フッ・・と柔らかい笑みを浮かべながら、閉じている木製の窓に手を掛ける。
「ここは俺が気に入っている場所だ・・・。今は埃っぽいがな・・」
ギィッ・・と軋む音を立てながら開かれた、両開きの窓。
「・・・・あぁ・・」
私は息を呑んだ。
開け放たれた窓から見る風景には、視界を遮るものは何もない。
建物も、壁も。
どこまでも遠く・・・外の世界へと続く夜空が広がっていた。
「綺麗・・・・」
深く、吸い込まれそうなほどの闇夜には、数え切れないほどの眩い星達。
キラキラと瞬く幾千もの星の囁きが聴こえてくる。
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ああ - ドキドキがとまりませんでした〜 (9月16日 22時) (
レス) @page28 id: 951a2a07c6 (このIDを非表示/違反報告)
じっくりコトコト - 兵長と一般人の恋愛は一味違っていて、とてもドキドキしました！一般人に見せる兵長の優しい顔、すてきだろうなぁと想像しながら読み進めました！ (2021年1月13日 16時) (レス) id: 693713d422 (このIDを非表示/違反報告)
りぃまーる - 泣いてしまいました。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月21日 14時) (レス) id: a3334f2d39 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - サロメさん» サロメさん、コメントありがとうございます！初めて書いたもので恥ずかしいのですが、温かい言葉を頂き、とっても嬉しいです(；▽；) (2017年10月1日 1時) (レス) id: de23ec7cfd (このIDを非表示/違反報告)
サロメ - コメント失礼します！とても優しい話で、久々に読みきった時の喜びと悲しさが大きかったです。素敵な話をありがとうございます。 (2017年10月1日 0時) (レス) id: 657e6fdf88 (このIDを非表示/違反報告)
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