６１話『残酷なこの世界を』 ページ11
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「すぐに片付ける。そこに座って待っていてくれ」
彼が勧めてくれたソファーに腰掛け待っていると、紅茶の良い香りがしてきた。
アールグレイかな？
ベルガモットの香りがする。
「・・・あまりいい茶葉じゃねぇんだが」
そう言って紅茶を淹れたカップを渡してくれる。
「わぁ！ありがとう、リヴァイ！・・・いい香り」
「・・そうか？なら、よかった」
「いつも自分で淹れてばかりだし。リヴァイが淹れてくれた紅茶だなんて、凄く嬉しいよ」
「こんなので良ければ、いつでも用意してやる」
「ふふっ、ありがとう」
デスクに戻る彼の背を見つめる。
書類を眺め、何かを書き込んでいるようだ。
真剣な彼の眼差しにドキッとする。
兵士長ともなれば、色々な仕事があるに違いない。
巨人と戦うだけじゃないんだよね。
そうやって、調査兵団という組織は成り立っているんだと改めて実感する。
廊下を歩いて来た時、何人もの兵士が彼に敬礼していた。
彼を尊敬や憧れの目で見ていた兵士もいれば、恐れを感じている兵士もいたように思う。
私も最初、彼が店に来てくれた時はそうだった。
でも、今は違う。
『リヴァイ兵士長』ではなく、ひとりの男性として彼のすべてを愛するようになった。
それは、彼の兵士としての生き方をも愛するということ。
覚悟は出来ている。
彼に愛されずに、彼を失うことの方が怖い。
そんな事を、とりとめもなく考えていると、「・・・A」と彼が私を呼ぶ声で我に帰った。
「・・・待たせてすまなかった」
「ううん、大丈夫」
「少し・・・話をしてもいいか？」
「うん」
私の隣に座るリヴァイ。
何だろう・・・。
「まだ先に思うかもしれないが・・・お前には早めに伝えておこうと思ってな。壁外調査の事だ」
「壁外・・・」
「・・ああ。二ヶ月後に決定した。今はまだ・・そう忙しくはないが、時期がくればお前とも
会えない日が続くだろう・・・」
目を伏せ、憂いに満ちた表情を浮かべる彼。
あなたも会えなくなる事を辛いと感じてくれているんだ・・・。
「待ってる。私、リヴァイのことをずっと待っているからね」
「・・・A」
彼の優しい手が、そっと私の髪を撫でる。
「・・・待っていてくれ」
「うん」
彼が切なく甘いキスをくれた。
私はその口づけに、ひとり誓う。
あなたの強さは、残酷なこの世界を生き延びて、運命を変えるために神様がくれたもの。
私はそう信じて必ず帰りを待っていると。
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６２話『・・飯でも食いに行くか？』→←６０話『・・・嫉妬か』
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ああ - ドキドキがとまりませんでした〜 (9月16日 22時) (
レス) @page28 id: 951a2a07c6 (このIDを非表示/違反報告)
じっくりコトコト - 兵長と一般人の恋愛は一味違っていて、とてもドキドキしました！一般人に見せる兵長の優しい顔、すてきだろうなぁと想像しながら読み進めました！ (2021年1月13日 16時) (レス) id: 693713d422 (このIDを非表示/違反報告)
りぃまーる - 泣いてしまいました。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月21日 14時) (レス) id: a3334f2d39 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - サロメさん» サロメさん、コメントありがとうございます！初めて書いたもので恥ずかしいのですが、温かい言葉を頂き、とっても嬉しいです(；▽；) (2017年10月1日 1時) (レス) id: de23ec7cfd (このIDを非表示/違反報告)
サロメ - コメント失礼します！とても優しい話で、久々に読みきった時の喜びと悲しさが大きかったです。素敵な話をありがとうございます。 (2017年10月1日 0時) (レス) id: 657e6fdf88 (このIDを非表示/違反報告)
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