報復 ページ14
背後に迫る恐怖に耐えながら、アクセルを全開で踏みつける。
「あいつがそうなんだな！？襲撃の信号を受けた巨大蟲なんだろ！？」
「うん。一匹が討伐軍の気を引き付けて囮になる。その隙に、もう一匹が一ヵ所に集まった沢山の無抵抗な獲物を襲う。それが奴らの作戦だよ」
「作戦！？クソ蟲め！民間の避難所を襲って、喰うつもりなのか！」
「ううん、違う。目的は捕食じゃないんだ」
「え･･････？」
蒼生の意外な返答に彼は戸惑った。なぜなら、これまでの生態調査において、捕食以外の襲撃は皆無に等しかったからである。
これは人間を《外敵》ではなく《捕食対象》として位置づけているのだという判断材料になったし、捕食行動の減退化が起こってからは、こちらが好戦的にならなければ襲って来ることはなかった。
しかし、次に蒼生が発した言葉は、それらの調査結果を覆すには十分すぎる程の盲点をついたものだった。
「これは、僕があいつらの仲間を殺した事への報復だよ」
そうだ。
蒼生が《ザムザ》を討伐した事で、人類は《捕食対象》から、危惧するべき《外敵》へと変化を遂げるはずだ。種族や仲間意識が高ければ尚更だろう。
「《ザムザ》はね、滅茶苦茶にやっているように見えて、きちんと統率もされてるし、信号音にしても規則制がある生物なんだ。だからこそ、僕は《ザムザ》の行動論理や生態を把握出来た。でも今回のは違う。僕が討伐を成功させてからは、行動の主軸が変わったんだよ」
蒼生はシートに立ち膝をつき、後方を向いている。
その瞳には徐々に大きくなる黒塊が映っているはずだ。古い車に無理をさせて、かなりのスピードで走らせているが、一向に振りきれない。
「僕なんだ。この戦いの引き金を引いたのは。僕のせいなんだ。でも前に進むには、失うことを怖がっちゃ駄目なんだ。生きる為に。世界を守るために」
とつとつと自らに言い聞かせるように語る蒼生の言葉が、焦り乱れる杏里の心を幾らか鎮めた。
この子は強い。
これは憶測だが、蒼生は人が餌食になる様ですら、歯を食い縛りながら《ザムザ》の動向を観察していたのではないか。もちろん、彼自身も幾度となくその身を危険に晒してきたことだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凪沙(プロフ) - 雛雪。さん» 読んでくれてありがとう〜////次回から蒼生の戦いだよお！ (2017年9月16日 12時) (
レス) id: 69c3a15575 (このIDを非表示/違反報告)
雛雪。(プロフ) - 凪沙さん» 蒼生クンの小さな背中に使命を感じつつも、室長にとってはもどかしさが伝わる空気……(*;ﾟ;艸;ﾟ;)途中まで読めて無くて、今日になってやっとこさ読めた〜〜〜ﾟ+.ﾟ(´▽`人)ﾟ+.ﾟ (2017年9月15日 16時) (レス) id: 083e971712 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - 雛雪。さん» きゃああ！ごめん、遅くなって〜〜！ヽ(；▽；)ノというか、雛雪さん自体が久しぶり��(ﾟДﾟ)あわわ...！ありがとう〜！ (2017年7月30日 15時) (レス) id: 69c3a15575 (このIDを非表示/違反報告)
雛雪。(プロフ) - 凪沙さん» 続き待ってました〜〜〜(*;ﾟ;艸;ﾟ;)ｱﾜﾜ…VRメガネ掛けていたい程の風景が……戦慄がリアル〜〜〜((( ；ﾟДﾟ)))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ (2017年7月30日 14時) (レス) id: 083e971712 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - Ａｋｋｉｙさん» わああ！Ａｋｋｉｙ、久々だぁ！ヽ(；▽；)ノ続編来てくれてありがとう！臨場感...今後も出せるように頑張るよぉ！( ´ ▽ ` )ﾉ (2017年3月23日 21時) (レス) id: 69c3a15575 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
