守るべきもの ページ33
「大丈夫だ。きっと事情があって連絡が取れないんだよ。無事でいるさ」
小さく震えている蒼生の肩に手を置き言った。
「・・・うん。そうだね・・・。きっと、無事だよね!」
蒼生は説得力の欠片もない、子供騙しの俺のエールに素直に頷いた。
俺はこの時初めて、蒼生は普通の子供と何ら変わらないのだと感じた。
こんな風に思われるのは彼の本意ではないかもしれないが、それだけ蒼生の印象は俺が知る《子供》とはあまりに掛け離れていて、強烈に映ったのだ。
恥ずかしい話だが、劣等感や一種の恐れすら感じた。
しかし、どんなに天才と呼ばれ並外れた知識と学力を持ち合わせていようと、蒼生は
俺には世界を守る力が無い。
だが、蒼生が世界を守り人類を救う鍵となり得るのなら、俺が守るべきものは・・・この小さな戦士ではないのか。
守るといいながら、たったひとりの子供に人類の未来を
「杏里!」
蒼生がハッとした顔でパソコンの前に舞い戻り、マウスを動かし始めた。
「どうした。これ以上はもうやめてくれよ?」
「もうひとつ、大変なメールが来てたんだ」
「何だって・・・!?」
蒼生が避けたので、代わりに椅子に座り画面を見た。
今度は極秘文書ではなく、見慣れた俺宛のメールボックスが表示されている。
一通未読メールがあり、その件名を見た俺は引きつり笑いをするしかなかった。
《退職処分通告》
本文を読むと、俺が室長としての責務を果たしておらず不相応として、明日から一週間の謹慎処分後、退職せよとの辞令だった。
「ハハ・・・」
天井を仰いだ。
力無い笑いが込み上げる。
昨日の件があったとは言え、俺なりにやってきたつもりだった。
危険な仕事もしてきた。
何かしてくれとは思わないが、その終わりがメール一通とは情けなくなる。
俺はその程度の存在だったという事だ。
こんな時に何の後ろ盾もない俺が、一体どうして蒼生の力になれるというのか。
いや、室長の権限があろうとなかろうと、俺は世界の小さな歯車でしかない事に変わりはないのだ。
むしろ組織にいては見えない事もあるかもしれない。
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凪沙(プロフ) - 沙羅さん» ありがとぉ沙羅!o(≧▽≦)o この先視点が色々になるからね、ゴチャゴチャしないように頑張る〜!戦車まだまだ出るよ〜(笑) (2017年1月29日 23時) (レス) id: 69c3a15575 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 戦車出た〜!!(≧▽≦)ガルパン好きな私としてはテンション上がる〜!すごく想像できるよ(笑)いよいよ戦闘が始まったね!蒼生くんの登場も楽しみにしてる〜♪ (2017年1月29日 23時) (レス) id: e76103ed1a (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - 雛雪。さん» コメントありがとう!やっと戦闘めいてきたけど、人類ヤバイです(>_<)ドキドキしてもらえるように頑張る〜! (2017年1月29日 22時) (レス) id: 69c3a15575 (このIDを非表示/違反報告)
雛雪。(プロフ) - 凪沙さん» 全人類に成す術は在るのか………ヽ(;゚;Д;゚;; )!!めちゃめちゃ凄いSFの醍醐味になってきたよ〜〜〜Σ(・∀・|||) (2017年1月29日 20時) (レス) id: 083e971712 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - 桜吹雪さん» 桜吹雪さん、読みに来ていただいて嬉しいです!ヽ(;▽;)ノ感想まで...ありがとうございます!今後も頑張りますねっ♪イベント参加させて頂き、ありがとうございます(≧∇≦) (2017年1月29日 18時) (レス) id: 69c3a15575 (このIDを非表示/違反報告)
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