【SF巨大生物】R E D ー僕が世界を救うその日までー【オリジナル】

増えた敵 ページ31

「こんなの核実験と変わらないよ！打つ手が無くて焦ってるんだ。僕は核が《人類の英知》だなんて思わない。あんなのは人間の愚かさの象徴だよ。・・・1945年の長崎と広島・・・。核を落とされた国がどうなるか、みんな知ってるはずなのに。自分達でこの世界を壊すなんて！！」


蒼生は怒りと半ば呆れた様子で、首を横に振りながら言った。

俺も蒼生に同感だった。

さんざん蟲に破壊された国を、今度は自らの手で滅ぼすとは狂気の沙汰だ。


しかし、事実・・・人類はそこまで追い込まれている。


「杏里。もし核を投下したとして、あいつらは全滅すると思う？」

「・・・わからない」

「ふふっ。僕はね、駄目だと思う。杏里のあの説、いい線いってると思うもん」

「あの説？」

「うん。《古代種》って説。何億年もの間、地球上や地球外からのあらゆる現象に耐えながら、現代まで生き延びる術(すべ)を身につけてきたのだとしたら・・・。核攻撃の衝撃や、数百万度の熱風や熱線でも生き残るかもしれない。それに・・・死の灰って知ってるでしょ？」

「ああ・・・」

「放射性降下物(ほうしゃせいこうかぶつ)で汚染された地でも生存する可能性は高いと思うんだ。降下物の半減期は、長いものでストロンチウム90の二十九年。放射能汚染で何十年も近づけないだろうね。だから作戦が失敗して《ザムザ》が生き延びたら・・・人類は自ら《ザムザ》に地上を差し出したのと同じなんだよ」


回転椅子に座っていた蒼生は、クルクルと回りながら話していた。

先程は少し興奮した様子を見せていたが、今はもう冷静だった。

昆虫に続き、今度は核の知識に驚かされたが、昨夜のネットの件があったので妙に納得してしまった。

ネットの件についても気になるが、今は極秘メールの内容に驚愕(きょうがく)して、それどころではない。





確かに核が最終兵器と言っている以上、それが通用しなかった場合、《ザムザ》は地上で繁栄し人間は追いやられ、餌食になるのを待つばかりだ。


「お偉方も馬鹿じゃない。それも承知の上で賭けに出るんだろうな。それだけ切羽詰まってるって事だ」


椅子の回転が止まる。


「こうなる事は予想していたんだ。少し早かったけどね。・・・敵が増えたよ、杏里」

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