【SF巨大生物】R E D ー僕が世界を救うその日までー【オリジナル】

宝物 ページ23

さっきまでの俺なら、何を馬鹿な事を・・・と一蹴(いっしゅう)したのだろうが、この話には頷(うなず)ける点があるのだ。


見えるものばかりに気を取られていたのかもしれない。



では《見えない攻撃》も・・・！？


「お前・・・《ザムザ》に近づいただけで人が死ぬ・・あの攻撃、知ってるか？」

「もちろん。あれはね、後翅(こうし)を使うんだ。甲殻(こうかく)の内側に隠されている後翅(こうし)は、超音波を発生させる装置になっていて、限界まで高めた音波を空気に振動(しんどう)させて波動を放つんだよ。津波みたいなイメージかなぁ・・・」


それは俺の予想を遥かに上回る回答だった。



目の前にいるのは、紛れもなく子供だ。

これが嘘で思いつくレベルだろうか。



それに・・・これではまるで・・・・・。


「波動は人体内部に衝撃を与えるんだ。人間の脳味噌(のうみそ)なんて簡単に潰されちゃう。死んだ人の解剖ができれば、答えに辿(たど)りつけたかもしれないね。でも、みんな食べられちゃったから・・・」


解剖・・・・。

そうだ。



蒼生はまるで、あの巨大な《ザムザ》を解剖し、その目で見てきたように話すのだ。

しかし、それはどんなに視野を広げてみたところで、不可能だろう。




ふと、蒼生を見ると、窓の外を静かに眺めていた。


視線の先には赤間山の輪郭(りんかく)がぼんやりと見える。



施設にいたと言っていた。

とすると、恐らく彼の両親も《ザムザ》の犠牲者だろう。


「杏里のおじさんは良い人だ」


腰掛けていた窓辺から勢いよく飛び降りると、背負っていたリュックに駆け寄る。

中から取り出したのは、薄緑色のスケッチブックだった。


「僕の宝物を見せてあげる」


テーブルの上の食器を端に寄せ、スケッチブックを置くと、絵本をせがむ子供のように「早く、早く」と俺の袖を引っ張る。



表紙は傷みが激しかった。

いつも持ち歩いているのだろうか。


宝物と言われたので、慎重に表紙を捲(めく)る。



一枚目に描かれていたのは、蛹(さなぎ)と蝶のデッサンだった。


「これは、お前が？」

「うん。いいから、次、次！」


どうやら見せたいものは先にあるらしい。



それにしても、子供が描いたとは思えないほど、正確に描かれているので驚いた。

羽の細かな模様の描き込みには目を見張るものがある。

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