【SF巨大生物】R E D ー僕が世界を救うその日までー【オリジナル】

不破 蒼生 ページ21

無情にも固く閉ざされた扉の前で、杏里はしばし呆然(ぼうぜん)と立ち尽くしていた。


様々な想いが去来する。


最後の最後でこの失態だ。
俺は研究員としても残れないだろう。

二階堂や上層部への反感は多少なりともあるが、わかってる・・・。


俺は役立たずだ。


二階堂の言う通り、俺は自分の無力さを棚に上げ、得体の知れない英雄に期待していたのだろうか。


英雄・・・・馬鹿げてる。






隣を見ると、つまみ出された少年が膝を抱えて座っていた。

頰(ほお)はまだ膨らんだままだった。


俺はそれほど出来た大人じゃない。



赤いローブ・・・。
英雄気取りのセリフ・・・。

大人気ないが腹が立つ。


「お前は一体何なんだ・・・」


吐き捨てるように呟(つぶや)くと、俺の問いに答えるでも無く返ってきた言葉に呆れた。


「おじさん、僕お腹すいちゃった」


腕時計に目をやると、19時になろうかというところだった。

お子様は晩飯の時間か。



俺も朝から何も口にしていなかった。

コーヒーもお預けをくらったままだ。


俺は自分で思っていたほどデリケートじゃないらしい。

こんな窮地(きゅうち)でも、腹の虫が鳴る。
もっとも、隣から聞こえてくる音には敵わないが。






とにかく、ここにいても仕方がない。

気が進まないが、俺は少年を連れ、研究室へ戻ることにした。


幸い研究室には誰もいなかった。


念願のコーヒーと、レトルトのシチューにパンを二人分用意する。
まったく俺はとんだお人好しだ・・・。


テーブルでは少年がスプーンを握りしめ、身体を前後に揺らしている。

「大人しく待っていろ」という言いつけは守っているようだ。


テーブルに簡素な食事が用意されると「白いシチュー！！」と歓喜の声を上げ、黙々と食べ始めた。







「お前、名前は？」


口いっぱいに頬張ったものを懸命(けんめい)に飲み込み、少年は答える。


「僕？不破(ふわ)蒼生(あおい)」

「そうか・・・。めずらしい名前だな」


不破(ふわ)・・蒼生(あおい)。

なぜだろう。
知った名前のような気がしたが・・・わからない。

気のせいだろうか。

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