【SF巨大生物】R E D ー僕が世界を救うその日までー【オリジナル】

嘲笑 ページ20

「何だ・・・その子供は。杏里君。まさか君が連れてきたのかね・・・？」

「はあ！？いや、知りませんよ！」


まったくの濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)だ。

一体いつからここに・・・。
円卓の下に隠れていたのだろうか。


「ねえ、おじさん」


少年が大きな瞳を二階堂に向けた。


「もう《ザムザ》に攻撃するの、やめてくれる？邪魔なんだ。これ以上、無駄に兵隊さんが死んじゃうのも嫌でしょ？」


二階堂は眉をひそめたが、極(きわ)めて冷静に言葉を返す。


「無駄に・・だと？ふん・・・。杏里と何を共謀(きょうぼう)しているのかは知らないが、英雄ごっこなら余所(よそ)でやってくれないか。我々は今大事な会議をしているんだ」

「俺は何も・・！」


冗談じゃない！
俺がこんな子供と何をするっていうんだ！！


二階堂は杏里の訴(うった)えに取り合わず、近くにいる二人の兵士に合図した。

兵士は頷(うなず)くと、少年の腕を掴み立ち上がらせる。


「さあ来い！」


無理矢理立たされた少年は、唇を尖(とが)らせ、また意味のわからない事を口走った。


「あのねえ。おじさん達じゃ無理だよ」


次の瞬間、少年は兵士の腕をすり抜け、円卓に身を乗り出した。


「でも、僕ならあいつらを倒せる！！」

「こらっ・・・！このガキ！！」


身軽な動きで円卓上に駆け上る。

まるで少年の舞台と化した円卓の上で、両手を広げ瞳を輝かせ、誰もが耳を疑う台詞(せりふ)を言い放った。



「僕が世界を救うんだ！！」



ホールが静寂(せいじゃく)に包まれたのは、ほんの数秒だった。

名演に贈られる拍手喝采(はくしゅかっさい)の代わりに、嘲笑(ちょうしょう)と罵声(ばせい)が少年に浴びせられる。


「子供が何を言っているんだ！」

「冗談にも程がある！」


少年は舞台から担(かつ)ぎ降ろされた。

泣くでも喚(わめ)くでもなく、不満そうに頬(ほお)を膨らませている。


「やれやれ・・実に滑稽(こっけい)だな、杏里君！こんな子供の戯言(ざれごと)を信じるとは！現実から目を背けるとは言語道断！出て行きたまえ！！」


兵士が俺の腕を掴み、階段を上る。


「命令ですので」

「二階堂・・総司令！俺は無関係だ！！」


後ろを振り返り弁解(べんかい)したが、二階堂の冷ややかな視線が突き刺さるだけだった。

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