【SF巨大生物】R E D ー僕が世界を救うその日までー【オリジナル】

決定事項 ページ18

「つまりだ。君の演説を要約するとこうだ。死因は不明、正体も不明。死骸調査の成果は一切上げられなかった。違うかね？」


杏里はパソコンを閉じ、空いている円卓の幹部席に座った。


議長がその行動を咎(とが)めようとするのを、二階堂が制止する。


「ゼロだった敵の情報がわずかでも得られた。そこから新たな可能性を見い出すことも出来るかもしれない。成果が無かったなんて思ってませんよ、俺は」

「ほう・・・。珍しくまともな発言だな、杏里室長。だが結果が全てだ。残念だが君にはもう、時間が無いのだよ」

「・・・どういう事です？」


二階堂が幹部の顔を見渡すと、皆が小さく頷いた。


「これは決定事項だ、杏里君。《生態調査研究機関 日本支部》は解散！米国本部にて統括し、現研究員は解雇(かいこ)、もしくは管理下に置かれる事に合意する」

「そんな・・・」


そんな馬鹿な、と言いかけて言葉を飲み込んだ。



馬鹿は俺だ。
見限られた。

政府にも、軍にも。


握った拳(こぶし)に力が入る。
こんな俺にも、まだ悔しがるだけのプライドはあったのか。


「本部から派遣される研究員の下で働くか、調査を放棄(ほうき)するか。選択したまえ。猶予は一週間だ」

「一週間・・・」




なぜか、室長に任命された時の事を思い出す。



《ザムザ》は都心部を中心に侵攻範囲(しんこうはんい)を広めた事もあり、生物学・昆虫学に詳しい大学教授や専門家の多くが亡くなったと聞かされた。


俺は田舎(いなか)の浜に打ち上げられた鯨(くじら)の保護に立ち合っていたので、事無きを得ていたのだが。


とにかく、「少しでも生物学の知識がある人間の力を借りたい」と言われ、その時の俺は素直に要請(ようせい)を受け入れた。



実際任務に着いてから、軍が知り得る情報の少なさに驚き、次第に調査に行き詰まり・・・
自分の力の無さに憤(いきどお)りを感じるようになっていった。

決して手を抜いた訳では無い。



調査の対象が、あまりに謎に満ちていた。



本部から学者や博士が派遣(はけん)されるのだろうが、死骸も奪われた今、一体どうやって軍が欲する情報を得ようというのか。




情報・・・そうだ。


あの民間人が言っていた事は、一体・・・・。

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