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*245話「こぼれる」 ページ23

つぅーっと頬をつたった涙に、最初気づかなかった。
否、気づけなかった......。






急に泣き出したのに、孝先輩も、みんなも誰も驚かなかった。
いや、何人かは驚いていたかもしれないが、
私の視界には入っていなかった......。

左右の目から次々こぼれる涙。
同時にそれまで力をいれて引き締めていた表情筋も緩んだ。

ぐにゃりと歪む顔。

頭にのってるぬくもりはずっとそこにあった。


「な、んでっ」

「ん?」


ひっく、としゃっくりまで出てきた。

だが、それでも聞かなきゃいけない。


「お、おこって、なっいの?」

「なんで怒るのさ」


苦笑しながらそう言う孝先輩にますます涙がこぼれる。

それをジャージの袖で拭う。


「い、わなっかた。ちゅ、ちゅうが、くの、ことっ」

「うん。でも、話そうとしてたの知ってるからな」

「だ、だまって、た。かく、しっ、てた」

「うん。でも、普通そうなるべ」


左手で頭を撫でながら、右手は私の目元を優しくぬぐっていく。

いつもより近い距離なのに、
泣いているせいか、それどころじゃなかった。


「Aが話そうとして言えなかったのを知ってる。
黙ってることに罪悪感を持ちながら言えなかったのを知ってる」

「でも、もし自分が同じ状況にいたら俺も同じことをすると思う」


ぐいっと少し強めに目元を拭うと、
それを労るように優しく指でなぞらえる。


「ていうか、俺だったらバレー辞めるし、マネージャーも無理だって思うよ」
「それでも、マネージャーをしてくれたAをすごいと思ったよ」


いつの間にか頭にあった左手は擦る腕を掴んでいた。
そして、右手は左頬に添えられながら涙を一つ一つぬぐっていく。

優しく払っていく。


「A、俺たちは怒ってないよ」
「むしろ、“誇り”に思うよ」


にかっと笑った先輩に最後の一粒がこぼれ落ちた......。

*246話「それぞれの夜〜烏の憂い〜」菅原side→←*244話「わかってくれる」菅原side



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星蛍(プロフ) - ゆっぴぃさん» ありがとうございます!来年1月からハイキューが始まると聞いて最近更新を頑張っている次第です笑 パスワードにつきましてはこちらのミスです。すみません!!今日中に解除します!! (2019年11月19日 11時) (レス) id: b5b09ffd1d (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 猪絢さん» ありがとうございます!パスワードは解除したつもりでした。すみません!!今日中に解除しておきます!! (2019年11月19日 11時) (レス) id: b5b09ffd1d (このIDを非表示/違反報告)
ゆっぴぃ(プロフ) - 凄い面白くて毎回更新楽しみにしています。7章はパスかかってるので見れないのが悲しいです。近々見れるようになりますか?早く続き読みたいです。 (2019年11月19日 10時) (レス) id: 3c7526cd22 (このIDを非表示/違反報告)
猪絢(プロフ) - 面白くて読み込んじゃいました!7章パスワードかかってた見れないのですがまだ書き途中だったりするのでしょうか…? (2019年11月19日 1時) (レス) id: 262406d3d0 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 杏樹さん» それは良かったです!ありがとうございます(^-^) (2019年11月18日 22時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星蛍 x他1人 | 作成日時:2016年1月8日 20時

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