【HQ】烏に紛れている鷹 part5【烏野】

＊189話「二年生の絆」 ページ15

「よっす、王様くん。元気してる？」


午後になり、本当にやってきた藍さん。
来て早々、影山君に絡みだし、周囲の空気が凍る。

前回のこともあり、今度こそ切れるのではないかとハラハラしていると、
周りの予想に反して、影山君は藍さんに何も言わずに去って行った。


「影山が切れなかった……」

「あいつも成長してるってことだな」

「……お前らも見習ったら？」


感慨深そうに頷く田中と夕にチカちゃんが呆れた目でそう言うと、

二人は思い当たることがあるのか、ビシリと固まった。


「ま、田中と西谷が静かなのも怖いけどな」

「確かに！」

「雪降るかもね」

「「なんだとっ？！」」


和君と久君の会話に混ざって言えば、聞えたらしい二人が噛みついてくる。

その悪く言えば単純、良く言えば素直な様子に自然と言葉がこぼれた。


「……少し羨ましいけどね」


シーンッと静まり返るみんな。
我に返って、自分で発した言葉の意味を考え直す。

何言ってんの、私っ……。
なんて場の空気を換えようかと頭をフル回転させていると、
両脇にいた和君と久君が私の肩に手を置いた。


「辛かったら言っていいんだぞ」

「そうそう」


何故か嬉しそうな田中と夕。

状況がいまいち読み込めず、チカちゃんを見ると微笑まれた。


「まあ、仲間に頼れってことだな」

「不甲斐ないかもしれないけど……」

「おい、んなこと言うなよ！！」


和君と久君はそれぞれ私の頭を軽く撫でると、体育館へ戻っていった。

田中も最後にマイナス発言をした和君に文句を言いながら着いていく。

後に残った夕とチカちゃんもその後ろについていった。



残った私は頭のぬくもりを撫でながら、暫くその場にいた。

なんだか、無性に泣きたくなった……。

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