【HQ】烏に紛れている鷹 part5【烏野】

＊217話「過去編〜制服に着られる一年生〜」 ページ43

結局、入学してから陰口は続くもののこれといって変わらなかった。

二人はそう思ってたと思う。
真赭さんたちは気づいていたかもしれないが……。





市民体を終え、ＧＷ合宿も終えた5月某日。
だいぶ中学生活にも慣れてきたころだった。

その日は朝練が終わり、いつもより早く着替えて部室を出た。


「お疲れ様でしたっ」


先輩たちに挨拶するも、三年生の方々には無視される。

まぁ、もはや日常茶飯事なので気にしないけど……。


「じゃあ、また放課後ね〜」

「おつかれさん」


だが、藍さんと真赭さんはニコリと笑って返してくれる。
私はそれだけで充分だった。

出ようとしたとき、ちょうどよく結良が部室に入ってきた。


「え、A早くない？」

「今日、日直で」

「あれ？ そうだっけ？」

「昨日から言ってたでしょ。ほんと、結良はこれだから」

「悪うございましたっ」


昨日の下校と今朝の登校で伝えたことを教えれば、
後ろを通った叶羽に冷たい目で突っ込まれる結良。

その二人にも挨拶をして、私は職員室に向かった。

だが、その途中……。


「あれ？ こいつじゃね、佐伯に怪我させた一年って」

「あ、ほんとだ」


くすくすと笑う、恐らく二年生。

一人だったこともあり、早々に立ち去ろうとするも、
一歩遅く、あっという間に囲まれてしまった。


「すみません、通してください」

「え、嫌だけど？」

「てか、噂通り随分調子のってんねえ」


全く知らない人にそんなことを言われるも、
そのときは言い返す言葉も考えもなかったので、素通りしようとした。

だが、手首を掴まれ思いっきり壁に投げられた。
そして、そのまま続きを話し始める先輩たち。


「あんた佐伯さん怪我させたんだって？
それなのになんでまだバレー部にいんのよ」

「対した実力もないんでしょ？
だから、あんなせこいやり方でポジション奪ったんだよねー」

「うわ、なにそれ僻み？ サイテー」


痛みで顔を歪めながら、落とした鞄を持ち上げる。

何も言えない私に対して、どんどんエスカレートしていく彼女たち。


「ちょっと、なにか言えないわけ？」

「それとも図星だから？それじゃ、何も言えないわよねぇ」


肩を掴まれたが、反抗するのも面倒くさくて放っておいた。

だが、そのとき、


「……おい、何してんだ。あんたら」

「ゆ、結良……」


怖い顔をした結良が私と先輩の間に割り込んだ。

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