【HQ】烏に紛れている鷹 part3【烏野】

＊91話「本気」 ページ7

「孝先輩」

「どうした、A？
また迷子になるのを心配してんのか？」


ほっとしたのも束の間、

周りに聞こえるような声量で
そんなことを言う孝先輩に慌てる。


「なっ、違いますよっ」

「大丈夫、大丈夫！
また逸れても見つけてやるから！」

「だから、違いますってば！！」


頭を撫でてくれたときは優しい笑顔だったのに、
気づけば意地悪そうな笑みに頬を膨らませる。


確かに去年迷子になって、みんなに迷惑をかけたし、
見つけてくれた孝先輩には感謝してるけども！！

何もこんなところでこんな大声で言わなくてもいいじゃないかと、
非難めいた視線を送れば、一瞬酷く安心したような顔をされた。


え……？


そう思ったのも一瞬で、すぐに意地悪な顔に戻った。


「Aは地元のスーパーにもいけないもんなあ」

「だ、だからもういいですからっ」

「手でも繋ぐか？」


何気ないその一言にはたと思い浮かぶ。


「それですっ、孝先輩！！ 手を繋いでくださいっ」

「……え？」


そう言ったら今度は孝先輩が固まった。

というか、みんな固まった。


「そうしたら逸れませんし」

「逸れる前提なんだな」

「チカちゃんうるさい。それに私が隠れられる」


うんうん、と頷いてれば何故か頬を赤く染めた孝先輩が困ったように目線をそらした。

あれ、なんな変なこと言った……？


今更、自分の失言に気づいて
孝先輩につられるように自分の顔が暑くなるのを感じた。

すると、それまで見守っていた大地さんが口を開いた。


「ほら、茶番はそれくらいにしてもういくぞ」


そうですね！！

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