Quite Talk 3

お互い様 2 (それぞれの話「One Night…？」) ページ31

玉ちゃんの方がこっちには詳しい。

私がウロウロしてる間に捕まってしまった。



「歩くの早いよ」

「…だって怒ってるもん」

「だとしても、俺に怒ることないじゃん」

「巻き込むな、って言うから」

「それはニカに。Aには怒ってないよ」



玉ちゃんは優しい。
ほんとは多分怒ってる。

なのに、玉ちゃんが怒る気持ちが私が泣きそうな顔をしてるから
私が心配な気持ちを上回っちゃってほっとけないんだろう。



「ごめん」

「いいから。とりあえずせっかくだし、観光しよ」



玉ちゃんはいつもみたいに緩く笑って

「ほら、コラボカフェ行ってみたいんでしょ？」

私の手を引いて歩き出す。



行きたかった。
向こうで行きそびれた芸人さんのコラボカフェ。
でもそれはニカと3人でだから。

「行かない……」

鼻の奥がツンとする。



私を振り返った玉ちゃんはため息をつくと

「じゃあ、遊園地行こっか。ニカと一緒だと行けないでしょ」

車の鍵と電源を切ったスマホを見せてくれる。



「絶叫マシン乗ったらスカッとするよ」



そうかも。
楽しそう。


それから玉ちゃんはずっと笑わせてくれた。
だから私もいつの間にか笑ってて。

絶叫マシンにたくさん乗って遊んで楽しくて
夕方、駐車場に戻ってくる。



「どこ泊まる？」

玉ちゃんは私の性格を分かってる。
ニカと同じ所に泊まらないつもりなのを察してる。

「んー、探す」

仕方なくスマホの電源を入れたら途端にLINEがめちゃくちゃ来る。



全部、ニカ。

『いまどこ』『ごめん』『本当にごめん』の繰り返し。



「あは、俺んとこもすごく来てる」

玉ちゃんは笑って

「そろそろ許してあげたら？ニカが友達も大好きなのは昔からだから」

って多分泊まる予定だったホテルの方に車を走らせてる。



と、思ったら少し走らせただけで。

着いたのはイルミネーションが綺麗で有名なところだった。



「中にニカ居るから行っといで。終わったら電話くれれば迎えに来るから。1人でも、2人でも」



玉ちゃんに言われてドキッとする。

そうか、1人で帰ってきてもいいのか。
それって、ここでお別れってことか。



それは嫌だな。

でもじゃあなんでこんなにずっとニカから逃げてたのか、ってなると
もう分からない。



「色々考えてもAは分かんないよ、感覚で生きちゃう子だから」



玉ちゃんは笑って

「だから、ニカに会って答え出しておいで」

って、私を送り出してくれた。

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