Quite Talk 3

手のひら 8 (すぐ近くにいる ki) side ki ページ16

二階堂が会社で見せてくれたのは
観覧車の取り壊しについての資料だった。

「来週、発表なんだって」

ホントは部外秘なんだろうけど教えてくれる二階堂は

「Aさん、前に言ってたよ。ココで北山さんが言ってくれた言葉がめちゃくちゃ嬉しかった、って。何かは教えてくれるくれなかったけど、それを守ってもらえなかったとしても、言ってくれた気持ちが嬉しいから一生忘れない、って」

俺が知らなかった事を教えてくれた。



きっとAに改めて好きって言った事と
『一生そばにいて欲しい』って言った事だろう。

もしかしたら『好き』をずっと伝える、もかもしれない。

キスでの挨拶はずっと続けてるけど
Aが二階堂に『それを守ってくれなかったとしても』とか言ってるところに
俺にまだ不安があるって事。

それってめちゃくちゃヤバいし
俺がAに植え付けたトラウマって相当だったって実感した。



プロポーズは改めてする、って約束してたし
それなら改めてプロポーズするのは観覧車だな、って思って
ちょっと前に買ってまだ渡せてない指輪をココで渡して改めもう1回約束しよう、って思った。



そしてAが俺で笑顔になってくれるって分かった今、
もうココで言わねーと一生後悔する。



「俺と、結婚してください」



口にするとさすがに緊張するけど

「思い出の場所で、ちゃんと言っときたくて」

車の中からさっきポケットに入れた指輪の箱をAに握らせて言う。



「ずっとそばにいて、一生、Aの笑った顔を隣で見させて？」



むしろプロポーズと言うよりはお願いに近い。
Aはじーっと俺を見て、聞いてくれた後で

「じゃあ、ずっと私を笑わせて？」

俺が大好きな笑顔で言う。



「私も、宏光と一生、一緒に居たい。宏光といっぱい、笑い合いたい」



鈍くて、ダメダメで、いつも泣かせてばっかの俺に
こんな事を笑顔で言ってくれるAの気持ちが嬉しくて

「ん、いっぱい笑わせる」

頷いて、キスをする。

ちゅっ、って音を立てて離れて、
至近距離で見つめ合うとどちらともなく笑う。




「大好き」「愛してる」



Aの「大好き」と俺の「愛してる」が重なる。



またどちらともなく笑い合うと

「うわー、負けたっ」

「ふふふっ、俺のが上だな」

「大きさが違うもん」

「じゃあ俺のは深さが違う」

「えぇー、ずるっ」

ずっと笑いあって。



幸せ過ぎて、泣きそうになる。



俺がこんな気持ちになれるのは
Aだけだ。

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