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嘘だらけの婚約者 その後 17 ページ7

手術から10ヶ月後。

「横尾さん」

診察室に呼ばれる。



さすがに呼ばれ慣れて顔を上げると
いつもの看護師さんが部屋に誘導してくれる。



「経過は順調ですね」



お医者さんが言う。



「良かったです」

「後は半年に1回検診する感じで大丈夫ですね」

「ありがとうございます」



ホッとして笑うと

「…………って言おうとしたんですけど」

お医者さんが真顔になって私に向き直る。



「…………え?」



思わす固まる私に、お医者さんが告げたのは________



*******



「ただいま」

「おかえり」



お店に戻ると渉が笑顔で迎えてくれる。



カウンターにはミツさん。

そして今日はミツさんの会社の後輩で泣きぼくろが可愛い男の子も居る。



「よっ、A」

「こんにちは」



ミツさんが声を掛けてきて、普通に答えたつもりだったのに。



「A、どした?」



渉が聞いてくる。



「え?」

「なんか、あっただろ」



渉は私の変化に敏感だ。

布巾でお皿を拭く手を止めて私を見つめてくる。



「あーー…」



なんて言おう。

いま言うべきなのかな。
2人になってから言うべきなのかな。



「病院で、なんか言われたのか?」



渉はこういう時、ものすごく鋭い。



「えっと……」



なんて言おう。



詰まってると渉は私の目の前に立って

「ほら、ちゃんと話せ」

って少し責める口調で言う。



ミツさんや後輩くんが顔を見合わせてから

「あー……よこーさん。そんな詰め寄る言い方したらA、言い難いんじゃね?」

フォローしてくれるけど
今の渉には多分ミツさんの声は届いていない。



アイドルタイムで良かった。

渉がこのモードになったらお客さんの事そっちのけで
私が話すまで詰め寄るだろう。

お店営業してるんだからこんなんじゃダメだし、さっさと言わないと、と思いつつ
私だってまだ状況が飲み込めてないのにうまく話せるかどうか。



「あの……」

ようやく口を開く私に

「ん?」

返してくれる渉の声は優しい。



「あの、ね」



言いかけた時に入口のドアが開く。



「Aちゃーんっ」



入ってきたのはお義母さん。



あ、ヤバい。
先にお義母さん言っちゃう。

お義母さんからはさっきたまたま電話掛かってきたから先に言っちゃってる。

渉が怒るやつ!



お義母さんが息を吸うのが見えたから慌てて言った。



「子供、出来ました!双子のっ」



間一髪セーフ!!




と思ったのは、私だけだった。

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作者名:shizu | 作成日時:2023年4月17日 0時

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