すぐ近くにいる another story 12 (ページ22)

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妹。その後 6 -side F- ページ22

ついに兄貴から

「もー我慢できねー。俺がA不足」

夕飯にまた俺しか来なかった時に言われる。

「仕方ないじゃん、仕事なんだから」

「知らねーよ、仕事でも休みくらいあんだろ？つーか休ませろ。家族が会いてーって言ってんだから」

無茶苦茶を言う兄貴は

「かーちゃんもこの前無理矢理会いに行ったって言ってて。俺たちもそれくらいしねーとAに会えねーぞ」

スマホを操作して電話をかけてる。
きっとAにだろう。

なんだかんだ兄貴もAを溺愛してる。

俺よりAに会えない事を寂しがってるように見えて
何だか笑っちゃう。

しかも

「なんだよ、出るじゃねーか」

Aが電話に出たらしい。

「おい、次いつ休み？そろそろ会わねーとしんどいんだけど」

何で兄貴はこんなに素直に言えるんだろう？
羨ましい。

するとAが何か言ったのか兄貴がチラッとこっちを見て

「あはは！Aも寂しいんじゃん。じゃあ会おうぜ。太輔と3人で」

俺が行くのも決定事項になってて
相変わらず兄貴は容赦ない。

「ん。……ん、じゃあ次の土曜日な。よし。……へ？太輔？いま一緒だけど？」

兄貴が俺を見てスマホを差し出してきて

「代われって」

ってスマホを渡された。

「もしもし」

『たい兄？久しぶり』

電話口のAは何だかソワソワしてて。

『あのね、私ね、後輩に『藤ヶ谷先輩みたいになりたい』って言われたの。嬉しくて、一番にたい兄に言いたくて、まだ唯ちゃんにも報告してないの』

言い終わったらホッとしたのか息を吐いて

『あー、スッキリしたっ』

明るい声になる。

久しぶりに聞く明るい声が嬉しくて

「頑張ってるんだね」

言うと

『うん。頑張ってる』

しっかり答えるAに無性に会いたくなって。

つい口に出る。

「『会いたいなぁ…』」

それが、Aとハモって。
どちらともなく笑い合う。

「3人でご飯した後、泊まれる？」

『うん、泊まる』

「じゃあ、土曜日にね」

『うんっ』

兄貴にまた代わって時間を決めて電話を切ると

「な？強引に決めりゃいいんだよ、日なんて」

兄貴が言う。

「太輔は優しすぎ。そんな顔するなら待つことねーよ。Aくらいワガママ言えって」

そして兄貴には俺が我慢してたのもお見通しで

「つーか俺には本音言えよ？俺にとって太輔は一番大切な弟なんだから」

クシャクシャって俺の頭を撫でてくるから
照れ臭いけど、兄貴の優しさが嬉しかった。