嘘だらけの婚約者 その後 14 -side Y- ページ2
始まったAとの追い掛けっこ。
全然止まらないAは
見る限りほぼ全力疾走。
あーもう!
コッチにはパピーいるんだから
少し気を遣えっつの!!
走り続けたら
ようやく止まるAにやっと追い付いた。
「走るの……早ぇよ……」
さすがにしんどくて一度パピーを降ろしたら
走ってた時から起きてたのかパピーはAに駆け寄る。
それに気づいたAがパピーに手を伸ばす。
ダメだよ。
Aを先に抱きしめていいのをは俺だから。
パピーに伸ばした手を引っ張って
抱き寄せた。
そしてまず伝えたい事を伝える。
「好きじゃねーわけ、ねーだろ」
好きじゃなきゃこんなに走って追い掛けねーだろ。
言い逃げしたんだからほっとくだろ。
「こんなワガママで甘えん坊で、その癖いざと言う時は甘えてこなくて、心配ばっかかけて、何でも楽しんでくれて、いつも笑ってて、俺よりもパピーのこと大切にしてくれて、不貞腐れても楽しそうで……」
こんなにいい女、二度と現れない。
俺の事幸せにしてくれるのはAだけだ。
「好きに決まってるだろ、気づけよ、バカ」
「分かんなかったもん。さっきだってすごく嫌な顔してるしさ」
素直じゃない言い方しか出来ない俺に
即答するA。
さっきがどれの事を言ってるのか分かんないけど
「そりゃするだろ。ミツにばっかニコニコしてるのに俺にはムスッとした顔して」
ミツが他に好きな子出来てるの分かるけど
それでも嫉妬するくらいAが好きなのに。
確かに考えてみたら
最近は俺から『好き』ってAに言ってないかも。
婚約指輪だって可愛かったからやる、みたいな言い方したし。
分かったよ、ちゃんと伝えるよ。
「A、好きだよ。Aの事が好き過ぎてヤバい」
頭を撫でて言った。
なのにAは
「…………」
しばらく黙ったままで。
胸元がじんわりと温かくなってきたなと思ったら
「嫌い……っ」
涙声で言うAがギュッと抱きついて
「渉なんか、大嫌いだもんっ」
しゃくりあげながら泣き出す。
「そう?でも俺は大好き」
「嫌いっ、渉の事、大っ嫌いっ」
言いながらしっかりしがみついてくるから、もうそれか答えで。
口では素直じゃないけどどこか正直なところすら愛しい。
「ふーん、そっか」
頭をポンポンすると、子供みたいにAが泣き出す。
こんな俺たちにパピーが呆れたのか足元で丸くなると
Aの抱っこを諦めて眠りについた。
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作者名:shizu | 作成日時:2023年4月17日 0時