カカオ72% Part 5

カタチ。 25 -side T- ページ8

Aちゃんの誕生日当日。

担当してる美容師さんから
Aちゃんが大変身したって連絡が来た。

Aちゃんを担当した美容師さんは
俺の髪を担当してくれてる人の後輩で
シャンプーとかドライヤーしてくれた時もすごく丁寧だったし
なんせ服のセンスもいいから期待はしていた。

Aちゃんからもお礼のLINEが来て
満足過ぎて次の予約もしたって言うから
それなら良かったなーと思ったし。

ボブ好きのニカも喜んだかな、なんて思ってた。



次の日、撮影の予定が少し遅くなるっていうから
家でのんびりしてたら
チャイムの音がしてAちゃんがやって来た。

「あれ、裕太くんおはよー」

「おはよー。今日早いね」

「うん！天気いいからシーツとか大物洗おうと思って！」

にっこり笑うAちゃんの目はパンパンで。
少し元気が無い。



っていうか

「めちゃくちゃ似合うね、髪。そこまで短いの初めて見た」

ボブ、すごく似合ってる。
そして初めて見るモスグリーンのワンピースもめちゃくちゃ可愛い。

「日本来る前は髪もずっとこの位だったんだよー。これも昨日買ったの！ありがとね、裕太くん」

ワンピースをアピールしながら明るく言うAちゃんだけど。



声と顔が比例してない。

全然いつものAちゃんじゃない。



「…どしたの？」

「え？」

「元気なくない？」

「そう？」



ニッて笑うAちゃんだけど。

やっぱり元気ないしなんとなく察する。



「……ニカに似合わないって言われた？」



聞くと少し反応するAちゃんは

「全然似合わないって」

って寂しそうに笑う。



「でもね、私は気に入ってるの！しかもドライヤーの時間めちゃくちゃ短くなったよー！大正解だった！」



一生懸命明るく言うAちゃんが逆に切ない。



一番喜んでほしいニカに似合わないって言われたら
そりゃ悲しいよね。



「今日の夜、お祝いしよっか？ミツも遅いでしょ」

「大丈夫！冷蔵庫のもの色々食べちゃわないとなんだ」



提案してもソッコーで断るAちゃんは
この前一緒に夕飯を食べてくれたのは疲れてた俺のためにたまたまなだけで
自分のためには俺を選んでくれない。

キッチリしてて甘えないAちゃんの性格が
無理してるようにしか見えない。



「それなら夕飯作るのお願いしていい？」

「もちろん！むしろありがたいよ！……じゃあ洗濯するねっ」



これ以上ニカの話をしないように逃げるように寝室に行くAちゃんが
切ない。

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