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嘘だらけの婚約者 その後 2 ページ27

ない。

渉より先に帰ろうとしたら私の鞄がない。
おかしい。

ちゃんとロッカーに入れて
鍵はしてないけどここに出入りできるのは店の従業員だけで
今日の人は誰もそんな事する人はいない筈なのに。



「お探しのものはコレかな」



声がして振り返ると渉がドヤ顔で私の鞄を持ってる。



「返してよ」

「だめ。A逃げる気だっただろ」

「……逃げるって」



人聞きの悪い。

先に帰るだけだもん。



……それが逃げる、になるのか。



黙ったままの私に

「昨日、嫌な気持ちにさせて悪かった」

渉が言う。



「別に。太ったのは事実だし」

「や、俺が勝手に太ったなんて思ってなくて9号にしたから…」

「でも渉『やっぱ』って言ったじゃん」

「それはごめん。でもAが言う通り太ったんだ、って意味で俺は太ったって全然思わな…」

「あぁー!もうっ!『太った』って言葉、何回も言わないで!」



気にしてるんだから!

だから今日は賄いも食べてないし!!



「だから俺はそう思ってないって」

「でも指輪入らなかったもん!前は9号入ったのに!!」

「知らねーよそんなの」



渉は笑いながら私に近づくと

「俺から見たらAは全然太ってねーし」

ものすごく愛しそうに頭を撫でてくれる。



「賄い、食ってないじゃん。お腹空いただろ」

「食べたら太るもん」

「オムライスばっか食うからだぞ」

「………好きなんだもん、渉のオムライス」

「ったく」



ツン、と私のおでこを小突く渉は私の手を引いてカウンターに行くと

「ほら」

いつの間に作ったのかオムライスを置く。
しかもいつもより少し小さめだ。



「これ。試作品のダイエット版オムライス」

「………え」

「中のご飯はオートミールで減塩でバターも半分。食って感想聞かせて」



隣にスプーンも置く渉は水を入れてくれながら

「最近女性客減っただろー?オフィス増えてるから需要あるはずだし。こういうメニューも考えようかな、って」

私の為だけじゃない感じを出しつつ
それで私の大好物のオムライスをチョイスするとか
私への優しさしかないじゃん。



これじゃ私が怒ってるのバカみたいだよ。



座って1口食べてみると

「………普通のやつの方が美味しい」

「当たり前だろ」

率直に感想を言うと冷たく言われる。



でも

「思ったより美味しい」

「……最初にそれ言えって」

私の感想に苦笑いする渉がまた小突くから
何となく仲直りっぽくなったけど。



渉、私に甘いよなー。

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深雪(プロフ) - 嘘だらけの婚約者、その後の話が読みたかったので嬉しいです。 (2022年11月21日 0時) (レス) @page28 id: a8c1d7b9de (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - pupupupu8887さん» コメント気づいてませんでした!ごめんなさい💦 横尾さん編もようやく始まりましたので是非! (2022年11月8日 20時) (レス) @page26 id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
pupupupu8887(プロフ) - いつも更新が楽しみです❤︎ (2022年9月25日 9時) (レス) @page2 id: e7fcebeb01 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shizu | 作成日時:2022年9月25日 7時

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