カカオ72% Part 3

つぎの一歩 31 -side You- ページ31

ニカは辛かったら言えって怒ってるけど
私たちしばらく連絡取り合ってすらいなかったじゃん。

何なの？



「Aちゃんが笑っててくれないと心配なんだけど」

なんて、まるでずっと心配してたみたいなテンションで言って来るけど
ニカは一体どの立場なわけ？

自分は女優さんと仲良くしてるのにさっ。
そっちに集中しなよ。

「辛くないもん」

ほっぺをつまんだままのニカを睨む。



そもそも人に笑顔どうこう言う前に

「ニカこそこの前の昼のバラエティで心から笑ってなかったよね」

ニカは笑顔がトレードマークじゃん。



「大好きな女優さんと一緒に出てたのに、笑ってたのに、本当は全然楽しそうじゃ無かったじゃん。ニカの方が何かあったの？」



ニカに言い返すと

「………え？」

ものすごく驚いた顔をしてる。




「だから、ホントは元気ないのニカの方じゃないの？」

「………そんな事…」



言いかけて止めるニカは
本当はそんなつもりなかったのか私に指摘されるなんて思ってなかったのか
そこで黙っちゃうし顔が強ばっちゃってるから。



あ、言われたくなかっなのかな、と思って

「何だ、気のせいかー」

誤魔化してグラスをテーブルに置くとロックアイスを冷凍庫から取り出した。



「ニカはロック？水割り？」

「あ、……んっと、最初ロック」

「ん、じゃ私もそうしよっと」



まだぼーっとしてるニカに

「ほら、ボトル。ニカが開けて？」

この話はこれで終わりだよ、って意味を込めて声を掛けると

「あ、うん」

ニカがボトルを取りに行ってグラスに注いでくれる。



「「かんぱーい」」



チン、と合わせるグラス。

1口飲むと広がる焼酎の旨み。



「美味しー！」「うまーーっ！」



声が重なって、微笑み合う。

そのニカの笑顔に
ものすごくときめいて。



ダメだ、私はやっぱりニカが好きだ
って事に気づいちゃう。



さっきは前の婚約者を思い出して泣いたのに
結局、人の心って分かんないよね。

自分が好きじゃない。

いまの自分が本当に大嫌いだ。

メソメソするし、にぃ離れ出来ないし
ニカにもフラフラして。



泣きそうになったタイミングで

「Aちゃん」

ニカに声を掛けられて我に返る。



「とりあえず食べて飲もっ。そっから色々話さない？」



ニッコリ笑うニカは

「今日この後の仕事は？」

「……しない」

「ん、なら夜までずっと遊ぼーよ」

何だか優しい声だから。



ニカを諦めなきゃなのに
嬉しくて頷いてしまう。

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