カカオ72% Part 3

つぎの一歩 27 -side You- ページ27

にぃのバカ。

『約束な？』って言ったのは
にぃなのに。

にぃ完全に忘れてる。



多分仕事がものすごく忙しかったんだろう。

にぃが悪気ないのも分かる。



にぃが寝静まってからシャワー浴びてベッドに入ったし
その時は別々で寝てたはずなのに
いつの間にかにぃは私を抱き締めて寝てるし。

にぃは単純に忘れてるだけだ。



逆にわざとだったら良かった。
めちゃくちゃ怒れたから。

こんな事で拗ねてにぃに嫌われたくなかった。



だからにぃが起きる前に出掛けておこうと思ったら

「あれ？早ぇな」

少し早くにぃが起きて来ちゃった。

「うん」

「タマんとこ？」

本当は今日裕太くんの所に行くのはお休みだけど

「ん、そう」

そっか、裕太くんの所に行くフリしよう、と思って
そのまま頷いた。



出来るだけ明るく家を出ると

「………ふぅ」

ため息をついた。



何処に行こうかな。

転職サイトでも登録しようかな。



あてもなくフラフラして
適当なお店でモーニングを食べる。

店内に居る人は
本を読んでる人や仕事してる人まで様々で
私みたいにフラフラ彷徨ってる人なんて多分居なくて。



トーストをかじりながら
これからどうしようかな、ってぼんやり考える。

割に合わない仕事を繋ぎでやるか
他の仕事をするか。

はたまた新しい仕事を探すか。



ぼんやり公園を歩きはじめたら
小さい子を連れて歩いてる親子連れや
ベンチで休憩してるサラリーマン。

ランニングしてるお姉さんやお散歩してる老夫婦。



何だかフラフラしてるのって私だけかな。



ベビーカーを連れてる人を見た時。



ふと、本当にふと。

私、もしかしたらあぁなれてたんだよな、って思い出しちゃった。



結婚の予定してたんだし。

大好きな彼とずっと、ずーっと、笑って過ごしてたかもしれない。

あのまま結婚してたら
多分、子供とか産まれてる頃だよね。



それを思い出したら
涙が溢れてきた。



考えないようにしてたのに。

にぃの所に来た時から忘れようとしてたのに。



もうひとつの人生を考えちゃった。



ダメだ。

寂しいせいだ。
コレは本当に良くない。



涙を拭いて大きく深呼吸する。

今日は美味しいものでも食べよ。
今から1人で天ぷらパーティしよっと。



よしっ。

家に向かって歩き出したらスマホが震える。



画面には『二階堂高嗣』



………ニカ？何で？




「もしもし」

『………もしもし』



久しぶりに聞くニカの声。



勝手にまた涙が溢れた。

つぎの一歩 28 -side 2-→←つぎの一歩 26 -side Ki-

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す