カカオ72% Part 3

つぎの一歩 16 -side You- ページ16

裕太くんの提案はとんでもなかった。

擬似恋愛とか
その相手が私でつとまるのかな。



ただ、裕太くんのハグは
にぃともニカとも違うけど
どこか気持ちいいハグで全然嫌じゃなかった。

だから振りほどけなくて。



そうこうしてたらつけたままのテレビからにぃの声で
キスマイのバラエティ番組のタイトルコールが流れた。

「え！もうこんな時間！？」

てことは日付変わってるじゃん！
慌てる私に

「あはほ、ホントだねー」

裕太くんはのんびり返してお皿を手にしてキッチンに向かう。



大変！
にぃの家に来てから日付変わるまで外に居たことなんて無かったのに！

慌ててキッチンにお皿を運びながらチラチラ番組を見てると
その番組のゲストがニカのお気に入りの女優さんだった。



そういえば、ドラマはこのチャンネルだし
これは番宣で来てるのかな。



その女優さんがにぃから紹介されると

『めっちゃドラマ見てます』

ニカが嬉しそうに言って

『ありがとうございますー』

キラキラの笑顔で女優さんが返す。



『むしろファンです！ドラマ全部見てます』

『ホントですか！？嬉しいーっ』

そのままニカと女優さんが前に出てたドラマの話をしだして『それ他局！楽屋でやれ！』ってにぃが突っ込んで皆が笑ってる。



何も面白くない。



食器を洗おうとすると

「もう遅いから後はいいよ」

裕太くんは甘い声で言って

「帰ったら連絡してね、心配だから」

って笑顔で見送ってくれちゃう。



そんな優しい裕太くんの後だったから
帰ってニカとにぃに怒られてさすがに凹んだ。

しかも

「タマと遊ぶの楽しいのは分かるけど、こっちのお礼の約束ずっと放置してんじゃん。さすがに酷くない？」

ニカは言うけど。



意味わかんない。

お礼ってそんなに偉そうにするものなの？

今日偶然裕太くんとご飯食べただけなのに
裕太くんを優先してズルい、みたいな言い方して何様のつもり？

自分は女優さんにあんなにデレデレしてるのに！



「…ニカには言われたくない」

泣きそうだった。
だけど泣くのは悔しかったから

「ニカのバーーーーーーカっ」

捨て台詞を吐いてシャワーに向かう。



デレデレしてるニカと違って
私は裕太くんのサポートをちゃんとしてるし！



後、私に出来る事は。



バスルームに入ると
その勢いで裕太くんに電話をした。

『もしもし？もうおうちについた？』

すぐ電話に出てくれた裕太くんに言う。



「私、引き受けるよ。裕太くんの擬似彼女」

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