太陽の当たる場所 11

after Wait for You 9 ページ15

アキを避けて
数日後。



結局
一部アキの会社とやり取りする事になった。

だから納品とかはアキだったりアキの会社の人が来る事になって
どうしてもたまに顔を合わせる。



最低限の会話だけしたし
アキはあれ以来何も言わなかった。



だから油断した。

ある日帰ろうとしたタイミングで
アキが納品に来た。



もう着替えた後だからさすがに帰るって分かっちゃってる。

こんな時に限って水野君も田原先輩も帰った後で
オーナーは電話してて
愛子さんは夕飯を作ってるのか換気扇からいい香りがしてた。



「…ご苦労さまです」

受け取って伝票にサインしてると

「話せないかな」

またアキから声を掛けてくる。



「話せません、帰るんで」

「帰るなら話せるだろ」



アキが昔みたいな口調で話してくる。



苛立ってるの？

どの立場よ？



ムッとしたけど

「仕事しにくいから。頼むから一度話させてよ」

さすがにアキの言葉も正論だった。



納品したものと伝票をガレージに置くとアキに向き直った。



しばらく沈黙した後で

「あの時の事、許せなんて言わない。ただの自己満だし聞き流してもらって構わないけど一度だけ言わせて欲しい」

アキがまっすぐ私を見て

「…あの時の事、本当にゴメン」

ものすごく深々と頭を下げた。



「Aに勝てる自信か無くて、A1人だけでも居なくなれば勝てる確率上がるって思って道具隠した。マジで最低だった。ホントごめん」



アキが言うけど
何とも思わなかった。いや、何とも思わないようにした。

アキも許さなくていいって言うし
聞き流せっていうから聞き流す事にした。
気持ちを空っぽにしないと立つのも必死だったから。



「何人かには聞かれた。Aはどうした？って。道具隠したのお前だろ、って言われたりもした。でもシカトして合格したけどやっぱずっと引っかかって」

だろうな、と思う事をアキは話して
やっぱりアキが淡々と懺悔してるだけの状態になる。

言ってスッキリするなら勝手にすればいい。
だから私も淡々と聞いていた。



「それよりも引っかかってたのはAと別れちゃったことで」



意外なことを言い出すアキ。



「一番後悔してたのはAを手放した事だった。美味いもん食べると浮かぶのはAの顔出し、一日が終わった時に浮かぶのもAで。ずっと好きで忘れられなくて」

アキが言ってるけど正直うわの空だった。



久しぶりに聞く『好き』が
ニカじゃないのが悲しいな、って。

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