Quite Talk

ジンクス(すぐ近くにいる ki) 7 ki ページ16

抱き締めると
無抵抗になってるA。

だからもう怒ってねーかな、なんて思う。



「A」

「なに？」

「……やっと声聞けた」



呼ぶと返事してくれるから
安心するけど

「お願いだから、別れるの取り消して。いつか今日の事を『こんな事あったよね』ってAと笑いたい」

言ってみてもAは黙ったまま。



さすがに都合良すぎか。

そーいやここで2年前にも『不安にさせない』言ったのに
結局不安にさせてる。

そりゃAも別れようって思っちゃうよな。



「だよな、俺でも無理だと思う」



自分の都合ばっかり押し付けて。
振られても仕方ない。

二階堂みたいに彼女を大切にするヤツの方が
幸せになれるかもな。



なのにAは泣き止んでたのに
また泣き出す。

なんで？



「………どした？」

Aの顔を覗き込もうとすると顔を逸らすから

「ん」

顎を掴んでこっちに向けると泣かないように必死になってて。



…Aになんて顔をさせてんだろ。

最低すぎ。



でもさすがに『これで最後』ってタイミングでこんな顔をしてくれるって事は

「なぁ、Aはまだ俺の事少しは好きでいてくれてる？」

聞いてみると

「………もう、わかんない」

言いながらギュッと俺の服を掴む。



もうギリギリのとこなんだな、って思う。
でも「嫌い」って言いきられてないってことは

「ん、じゃー嫌いな訳じゃねーな？」

聞いてみるけど

「………」

答えないA。



すっかり忘れてた。

Aはいつもそう。
俺の事ばっか考えて自分だけ我慢すればいいって思っちゃう。

会社の些細な仕事だって
周りが困らないように自分がやるんだった。



「……そーだったな。Aはいつも一番言いたいこと言えないんだったな」



好きすぎていてくれてるから
一周回って別れるって選択になった事が伝わった。



なら、答えは1つ。

唇を重ねて、少し長めのキスをする。



「…改めて、ごめん。Aが本当は寂しがり屋で、優しくて、俺が嫌になるだろうから、ってそればっか気にする子だったのをすっかり忘れてた」



Aの事で
一番忘れちゃいけないところ。

なのにAの優しさに甘えすぎて忘れちゃってた。



「もう一回、最後のチャンスくれない？これからはAの笑顔、守るから」



また泣きそうなAにもう一回キスして目を合わせると
目に溢れた涙を零してやっと小さく頷くA。




…もう二度と悲しませたりしねーから。

絶対に。

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