太陽の当たる場所 10

after Dahlia 18 ページ29

ベンチから離れて
そのまま私たちは
公園を歩く。

手を繋いだまま。

ニカはもうメガネを外してるし
手を繋いだままなのも荷物を持たせたままなのも気になる。



「ね、ニカ」

「ん？」

「…手」



私はもう手を握ってないんだけど。
ニカが離してくれない。

「離すとすぐAどっか行くから」

言い返すニカは拗ねた口調。



「もうどこも行かないよ」

「どうだか」

「行かないって」

「LINEまた消したクセに」

「…ブロックしただけだもん」

「俺には電話番号教えてないのにミツには番号教えてるしさ」

「北山さんには聞かれたんだもん。ニカ聞いてこなかったじゃん」



…あ。

思い出した。



「でもニカ、私の番号知ってるよね？前にニカがスマホ落とした時に番号教えてるじゃん」



確かその時は私がニカのスマホ持ってたから
仕事用のスマホだった気がするけど。



ニカは少し考えて

「……あ」

やっちゃった、って顔をしてる。



ほら、連絡出来ないことなかったじゃん。



「ってゆーかさ、そもそも寒いのにここに来てんの？」

「…帰りたくなかったんだもん」

「そんな寒そうなカッコしてるならここに居させなかったのに」



話題を変えようとしてるニカは
このヒラヒラのスカートの事を言ってるんだろうけど。

スカートの下は厚めのタイツだからむしろいつもより温かいよ。



「これ、タイツも履いてるから寒くないんだよ」

「そんなの信じらんない」

「なら履いてみる？」

「……いい」



でもそっぽ向いたまま

「めっちゃ可愛い」

耳まで赤いニカが言うから。



ニカとの今後があるなら
たまにスカート履こう、なんて思う。



何となくわかった。
ニカはとにかく文句が言いたいみたい。

だから逆に聞いた。



「他には？不満ない？」

「……」



ニカは真っ赤なままこちらを向いてムスッとしたまま

「むしろAは？不満ないの？」

ものすごく文句を言いたそうな言い方をしてて。



不満？

不満は……

「な…」「ウソだねーっ」

ないよっていいかけると食い気味に言うニカは

「無かったらお別れなんて発想ないもんっ」

ギューって痛いくらい手を握ってくる。



「いたいいたいっ」

「ほら、言いなよ不満っ」



ニカは全然手を緩めてくれない。



もうっ、ホントにニカは俺様なんだから。



でも見上げるとニカは楽しそうに笑ってて。

この顔を見れないかもしれなかったって分かったら
私の不満は『これ』だけかも、とも思った。

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