太陽の当たる場所 10

after Dahlia 10 ページ11

「行ってきまーす」

笑顔のニカが玄関で手を振る。

「行ってらっしゃい」

私も振り返す。



パタン、とドアが閉じて。



ニカの足音が聞こえなくなってから
ため息をついた。



こらからどうしよう？

初めての幸せな誕生日。
なのに結局、こんな感じで。



なかなか病院に行く踏ん切りがつかない。

何処か遠くに行きたい。
予定してた新潟までお墓参りにでも行こうかな。



今日ニカはなんの仕事か言ってくれなかったけど
大事な仕事みたいだからLINEするのも、と思って
ニカに置き手紙を書く。

『ニカへ
やっぱりお墓参り行ってきます。
A』

…まぁ、夜には帰って来れるでしょ。

向こうは寒いから厚着をして新潟に向かう。



レンタカーを借りておばあちゃんちに行く。

アポなしだったしニカもいないから
おばあちゃんがものすごく驚いてるけど

「お墓参り行こ」

って言う私に

「嬉しい。ありがとね」

何も言わずに付き合ってくれた。



天気は雨だけど小雨だったし
問題なかった。



お墓参りをして
祐介くんちのお寿司屋さんでお寿司を食べる。

「今日誕生日だからね」

っておばあちゃんが茶碗蒸しも注文してくれた。



「ニカちゃんと喧嘩でもしたの？」

「ううん」

「そう」



おばあちゃんのニカに関する質問はそれだけで
あとは叔父さんや祐介君や充君の話になる。



夕方近くなって

「そろそろ帰ろうかな」

おばあちゃんに言うと

「ん、そうだね」

って席を立つおばあちゃん。



くるって振り返ると

「おばあちゃんはAの味方だからね」

優しく微笑まれて。



黙っておばあちゃんに抱きつくと
おばあちゃんはポンポン、と背中を優しく叩いてくれた。



何も聞かないおばあちゃんに感謝しかなくて
おばあちゃんを送ってレンタカーを返して駅に向かうと
新幹線が止まってるって表示が出ていた。



…どうしよう。

帰れないな。



そんなに遅くなる予定がなかったから
スマホの電池も残ってない。

おばあちゃんちに泊めてもらって…とも思ったけど
車をまた借りる事になるし
新幹線が終電までに動くかもしれない。

だからそのまま駅で待つことにした。



しばらくしてスマホが鳴る。



嫌な予感がしてスマホを見ると

『ニカ』

っていう表示。



あぁ、怒られるだろうな。



「はい」

『A？いまどこ？』

「…まだ新潟」

『は！？』



少しの沈黙。

『…何してんの？』



冷たい口調に悲しくなる。
そして腹も立つ。

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