太陽の当たる場所 9

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テスト当日。

服部先輩が付いてきてくれる。



前の日の帰りにオーナーからは

「もしもダメだったとしてもココが無くなったくらいじゃウチは潰れないから気楽に行ってこい」

明るく言われて少しだけ気が楽になった。



とは言え取引先に着いた時はさすがに緊張してくる。



深呼吸を繰り返してる私に服部先輩が

「俺、本当は嬉しかったよ。ちゃんと『自分でも大丈夫』ってAから言ってくれたから」

笑って言ってくれる。



「確かにこの世界は男が多いし、偏見もある。でも俺はAなら大丈夫だって思ってるから」

思いっきり私の背中を叩く服部先輩。



「いたっ！」

「近くで見てた俺やオーナーが大丈夫って言ってんだから大丈夫！お前なら出来る！」



緊張よりも背中がジンジンしますけど？



でも服部先輩のお陰で緊張は解れて
リラックスしてテストに向き合う事が出来た。



対象のバイクは
確かに少し難しい壊れ方をしていた。

でも原因は分かったし
持ってきたパーツで全て終える事が出来た。

予想より早かったんだろう。
エンジンをかけてみせたら

「……もう出来ました？」

その担当の人も驚いていて。



私も時間が余ってしまった感があるので

「いまある営業のバイクも軽くメンテナンスしましょうか？」

担当さんに声を掛けると

「……じゃあお願いしようかな」

気まずそうに営業用のバイク置き場に誘導される。



担当さんがバイクの鍵を取りに行くために事務所に行って姿が見えなくなると

「やったじゃん」

服部先輩が小声で言って肘で背中をグイッと押してくる。



「先輩たちのお陰です」

「いや、Aの仕事の丁寧さだよ。マジでオーナーに捨てられたら連絡して来いよ」

「…ありがとうございます」



嬉しくて笑っちゃうと
服部先輩は真剣な顔をして

「…最後だから言うけど。俺はホントにAの腕は信頼してるから。なんなら田原やオーナーより」

私の頭をまた撫でてくれた。



「最初オーナーに女の子雇うって言われて俺も『えっ？』て思ったけどAはホントに凄いよ。レーシングチームに居たとか女とか全然関係なく」


服部先輩と仕事の話をするのも
ここまで褒めてくれるのも初めてで。

しかも最初で最後だろうから嬉し過ぎて泣きそうになる。



「…ホントですか？」

「ん、自慢の後輩だよ」



ぐしゃぐしゃ、と頭を撫でてもらって痛みで
一瞬涙は引っ込んだけど。



服部先輩が困らないように
必死で涙を堪えた。

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