太陽の当たる場所 9

after Dahlia 2 ページ45

「んー、咲かないっ」

水を替えて
まだ蕾のままのお花の根元を少しだけ切る。



いま夜の23時。
ニカはまだ帰ってきてなくて
今日は珍しく『夕飯いらない』の連絡をくれた。

ただ、もうその時には
夕飯出来上がってたから
明日の私の朝ごはんにする事にした。



「このままだと君に茎無くなるかもね」

蕾のままのお花に話しかける。



最近、独り言が増えた。

ニカが忙しそうで全然話してないから。



仕事でも前は服部先輩がいたから
田原先輩とオーナーと4人で話す事も多かったけど
服部先輩が退職して3人になってから会話が減っている。

仲が悪いわけではなくて全て阿吽の呼吸で出来てるから会話が必要なくなってて。

働きにくい訳じゃないけど、単に会話が減っている。



ニカも話す時は話すけど
今日もこのままだと話さないで終わるかな。

明日も納品たくさんあるし、今日は寝よう。



「早くキミの咲いたところ見たいな」



そっと陽向になるところにお花を置いて
寝室に向かう。



ベッドに入ると体は疲れてるからすぐ眠くなってきて
いつの間にか寝てるとふとベッドが揺れる。

「……？」

目を開けるとニカがいた。




「ごめん、起こした？」

言いながら抱きしめてくれるニカは
晩酌したのかポカポカしてて。

「うん、起こされた」

抱き返してニカの胸に顔を当てると深呼吸する。



胸いっぱいに広がるニカの香り。

すごく落ち着いた。



「え、ごめん」

「ううん、全然平気」



それよりニカにくっついていたいよ。

ギュッとしがみつくとニカの手が私の頭に触れてゆっくり撫でてくれる。



ああ、気持ちいいな。
ニカと会話出来てなくてもこうして抱きしめられるとホッとする。



そしてだんだん眠くなる。

「ニカぁ……」

「んー？」

「おかえりー」

「ん、ただいま」

ポン、ポン、と背中をゆっくり叩かれて
ものすごく気持ちいい。



次に気づいた時にはニカはもう居なくて。

pipipipipi…

めざましが鳴ってた。



………夢かな？

だとしても、幸せだな。
朝ごはんに昨日の夕飯を食べて出勤する。



「おはようございます！」

ガレージにつくと

「おはよー」「おはよう、Aちゃん」

オーナーとオーナーの奥さんが返してくれる。



ただ、2人が慌ただしく支度をしてるから

「…どうかしました？」

声を掛けると

「田原が熱出して今日休みになった」

「え！」

オーナーの言葉に愕然とする。



今日は
ものすごく作業ある日だった。

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