サイボーグな彼女 16

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結局
その日のうちに試写は出来ず
解散となった。

宏光のスケジュールはビッシリなので
もう試写には参加出来ない。

元々最後の予定だったとはいえ
打ち上げは既に終わってるから
俳優さんたちやスタッフさんたちと会うのは今日が最後になる事になった。



「つーか何でAはあの部屋に入ったわけ？」



挨拶が終わって帰るってタイミングで
宏光が言う。



「ハチさんから電話が来て、その時廊下が賑やかだったんで電話の声が聞こえなくて。それに気づいたスタッフさんが誘導してくれたんです」

「へー」



あ、そういえば
マネージャー同士のLINEに停電して閉じ込められたって言ってから
無事を知らせていなかったな。



なんて思ったタイミングで

「ん？」

宏光がスマホを見て

「A、無事出れたことみんなに言ってねーの？」

メンバーだけのLINEグループで
そこで私が閉じ込められてる事が話題になっているみたいだった。



そして私も鞄に入れたままのスマホを見ると
大量の着信とLINEが来ていた。

着信は全てハチさんだった。



「…電話してきます」

「そーしろ。こっちはこっちでLINEしとく」



クックックッて笑いながらタバコのジェスチャーをするからタバコ渡して宏光を見送る。



電話をして辺りを見渡すけど
河井くんは見当たらない。

さすがにもうこれっきりかな。



ホッとしてるのか
結局最後まで話が出来なくて複雑な気持ちと
何の話か分からないけど話を聞かなくて済んで良かったっていう気持ちで
どこかモヤモヤした。



でも、河井くんには
私の事は気にしないでくださいって
伝えたし。

彼も時が経てば私と再会した事すら忘れるだろう。



…そういえば
宏光に返さないといけないものがあった。



タバコから戻ってきた宏光に

「これ、ありがとうございました」

タバコを受け取りながら小さいジッパーの袋に入れた宏光から借りていたペンダントを渡す。



「……ん？」

「借りてたものです」



返すのをすっかり忘れていた。
洗濯に行ったタイミングで置いていこうと思ってはや何日。
今日は宏光も直帰だし
今なら周りに人は居ないし車にはドラレコがあるから。


宏光はチラッと見た後で

「………それ、やるよ」

ぶっきらぼうに言うと先に歩き出す。



「え？」

「似合ってたしまた無くした時用に予備にもっとけ」



ズンズン歩く宏光の耳は赤くて。



「はい」



返事をしたけど宏光は照れくさいのか
振り返ってくれなかった。

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