サイボーグな彼女 16

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定食屋さんでご飯を食べて
うちに寄って温泉に向かう。



注文の時に

「ビール飲む？」

宏光に聞くと

「んーん、いらね。温泉でのぼせちゃうと良くねーし」

ってすごく優しい口調で言う。



なんだろう、宏光が今日はすごく穏やか。

ものすごく素だ。



だから私も同じように素だった。

宏光と一緒に私のオススメの豚肉の味噌漬け焼き定食を食べてる間も
大した会話もしてないけど
それでも宏光の存在が心地いい。



……まぁ宏光の声は特徴的だからバレそうになったら困るけど。



温泉までも運転してくれて
個室に入るなり宏光はポンポン脱ぎ出して

「早く入ろーぜ」

ってパンツ1枚で脱衣場にどんどん行く。



……早いなぁ。



宏光が脱いだのを簡単に畳んで宏光の後を追うと
既に湯船に入ってる宏光は

「早く来いよー」

楽しそうに声をかけてくる。



洗い場で洗ってから湯船に浸かると

「ほら、A、見て」

宏光が言う視線の先には綺麗なお月様。



「……うわぁ」

「ふふふっ、綺麗だよなー」



楽しそうに笑う宏光は

「これだけ明るいと星見えないかもだけど。その分月がめっちゃ綺麗だな」

パシャッて顔に温泉のお湯を付けて

「これで明日の肌はプルプルだなー」

ニコニコしてる宏光が嬉しくて。



嬉しいから
こんな宏光と2週間離れるとか。

それが嫌だとか思ってる最低な自分が嫌すぎて。



涙が溢れてくる。



そんな私に気づいて

「おいで」

宏光が呼ぶけど首を振る。



こんな私が宏光のそばに居ていいのかな。

おばあちゃんとも離れたくない。
宏光とも離れたくない。

最低過ぎる自分も
宏光が好き過ぎる自分も嫌で、
どうしたらいいのか分からなくて自分が壊れそうだった。



宏光、困るよね。

温泉から出ようとしたら宏光が後ろから抱き締めて。
そのまま何も言わずに抱き締め続けてくれた。



ほら、宏光はこんなに優しい。

訳分からない行動を取る私に何も言わずに泣き止むまで抱き締めてくれる。



泣き止んでひと息した頃に

「落ち着いてきた？」

相変わらず優しい口調の宏光。

黙って頷く私に
どうした？って聞かずにさらにギュッて抱き締めてくれる。



だからダメだ。
嬉しくて泣けてくる。

温泉で良かった。
背中を向けているから泣いてても分かりにくい。



でも鼻を啜ったら分かっちゃったみたいで
何も言わずに宏光がぽん、ぽん、って一定のリズムで頭を撫でてくれるから。



閉館ギリギリまで宏光の腕の中で過ごした。

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