サイボーグな彼女 16

after ただ君と 9 ページ27

「んー、やっぱ落ち着く」

宏光は私の部屋に入るなり言う。



何が？

「………」

つい黙って宏光を見ちゃうと

「いーじゃん、せっかくの休みなんだし。俺も客間に1人よりAと一緒の方が落ち着くんだよ」

ニッて笑う宏光は私のベッドに座る。



「そもそもAの部屋ってまともに入った事ねーし」



宏光はキョロキョロ私の部屋を見渡すけど
栃木から引っ越す時にほとんどの物を捨てたし
写真もぬいぐるみも何もないから相当殺風景な部屋だと思う。

どこが落ち着くのかな。



黙ったままの私に宏光はグイッて私を引っ張って自分の隣に座らせると

「……どーしても嫌なら客間行くけど？」

探るような顔で聞いてくるけど。
目を見れば宏光が私の部屋から出るつもりが無いのが分かる。



ただ、
私もいま宏光に一緒に居てほしい。

だから黙って宏光に抱きついてみると
宏光も何も言わずに包み込むように抱き締めてくれた。



「大丈夫、今日と明日はずっと一緒に居るよ」



宏光はずっと私が不安になってるのに気づいている。
だから一緒に居ようって言ってくれたんだ。

優しいね、やっぱり。

返事の代わりに
さらにしがみついてると宏光の手が頭に触れる。

もう片方の手で背中をポン、ポン、と一定のリズムでされてるうちにぼーっとしてきた。



あ、このままだと寝ちゃう。
お兄に色々話聞いたりお風呂も入ったりしたい。

腕の力を解くと宏光も緩めて

「ん、一度みんなんとこ行くか」

私のしたい事を全て分かってくれてる宏光は
チュッ、と唇に触れるだけのキスをする。



宏光が居てくれて良かった。

本当に思う。



「ありがとう、そうする」

「んーん、こんな時くらいしかAの事支えてやれねーしな」



お礼を言うとどこか寂しそうに呟く宏光。

こんな事言うってことはまだ私は宏光に甘えたりてないのかな。
十分甘えてるのに。



「甘えてるよ？」

つい反射的に言うと宏光はびっくりした顔で私を見て

「…そか」

嬉しそうに笑って抱き締めてくる。



……変な宏光。



抱き締めてくれる腕の中が気持ち良くて
宏光の胸元で深呼吸すると

「…ん」

ぽん、ぽん、とまた一定のリズムで背中を叩いてくれる。



ほら、甘えてるよ、私。

皆のところ行くって言いながら
結局ここから出てお兄たちの話を聞く勇気が出てない。



「Aが行く気になるまで、ココにいるから」



私をとことん甘えさせてくれる宏光が
いまここに居てくれて良かった。

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