サイボーグな彼女 16

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河井さんの横を
横切る時。

河井さんはペコッと会釈してくる。

巻き込んでごめんなさい、的な感じだろうか。



だから俺も一応会釈を返して
Aの後を追う。

「…いいのか？」

「はい」

Aは無表情で
淡々とエンジンをかけて走り出す。



河井さんが俺たちを
悲しそうに見送る。

これは俺が何か介入出来る事ではない。
Aと河井さんの問題だ。



……けどなー。



「これでこの話もうしないからさ、最後に一人言だけど言っていい？」



どーしても伝えたかった。

すぐ殻に閉じこもるAに
閉じこもらずに話を聞くだけ聞いてから判断してほしいって。



我慢して全てを遮断しがちなAの性格や
過去に嫌な事があったのも分かる。

でも後悔だけはして欲しくなくて。



言うだけ言うと寝たフリをした。



だいぶ経ってチラッとAを見ると
真剣な顔をしてるから。

きっとAなりに考えてくれてて。

Aが後悔しないように決断してくれるだろうな、ってわかる。



そして
放送は10月だけど数日後に全て撮り終えて無事クランクアップ。

その数週間後に試写会を行うことになった。



久しぶりに役者さんやスタッフさんと再会して
喫煙所で盛り上がってると河井さんがやってきた。

「……あ」

「こんにちは」

驚いてる河井さんに俺から挨拶した。

河井さんは最後が最後だから
少し気まずそうに挨拶を返してくれる。



ちょうどその時は
小学生の時の給食の話で盛り上がっていた。



その場にいた人は男の人ばかりだったからか

「まぁ昔なんてスカートめくりとか当たり前だったよなー。今やったらエライ事になるだろーな」

「いや昔だってエライ事でしょ」

男ならでは、な話になっちゃう。



「ほらー、好きな子にこそしたりするじゃん？そーいうのって。…北山くんはするタイプだった？」

ベテラン俳優さんに聞かれて

「いやー、女の子にはイタズラしなかったッスね。野郎とばっかつるんでました」

笑って答えた。



そして

「された側にとってはずーっと残りますよね、その人の記憶に。俺がどう思ってしてたかなんて、された側には関係ないッスからね」

半分以上、河井さんに向けて言った。



「おぉーさすが北山くん！チャラいのに真面目っ」

「えー？それ褒めてます？」



ひと盛り上がりして何となく戻る雰囲気になって
チラッと河井さんを見ると俯いている。





俺に出来るのはここまで。

後はAと河井さんがどうするか、だ。

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