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愛をこめて 3 ページ3

テレビの収録当日。

裕太には申し訳ないけど
午前中だけ仕事をしに行く。

終わったら
裕太の大好きなチャーハンを作る約束をした。

「お仕事から帰ってきたらいっぱいワガママ聞いてねー」

ニコニコしながら見送ってくれる裕太。

本当だったら今日は
美咲さんのところにパスタを食べに行く予定だったのに。

ものすごく申し訳ない。



現地に着くと本番前でものすごくピリピリしてる。

確か一発録りでやり直し出来ないんだよね。



酒井さんを見つけて

「酒井さん、あの、千賀さんは……」

声を掛けると、その視線の先に千賀さんがいて
青白い顔をしていた。

私には気づかないでぼんやりと一点を見つめている。



「昨日練習出来てない分、不安みたいで」

小声で教えてくれる酒井さんは
心配そうに千賀さんを見ている。



それはそうだろう。

ただ、私は何となく分かっている。

「千賀さん」

声を掛けると千賀さんはようやく私に気づく。
でも私と目が合うと目を逸らす。



ただ、これも想定の範囲内。

「…練習、しちゃったんでしょ」

声を掛けると千賀さんは俯く。



やっぱりなぁー。

「で、いま指がうまく動かないんですよね?」

尋ねると頷く千賀さん。



だからダメって言ったのに。

でも千賀さんの気持ちも分かるから。



「最終リハまであとどれくらいですか?」

酒井さんに聞くと

「あと15分です」

時計を見て答えてくれる。



「千賀さん、痛い方の手を出してください」

声を掛けると申し訳なさそうに手を出す千賀さんの手を掴むと
マッサージをする。

凝ってるところをグリグリ押すと

「イタタタタっ」

千賀さんが痛そうだけどそんなの知らない。



緊張で冷たくなっている千賀さんの手をグリグリ押してマッサージをしながら

「大丈夫、千賀さんは弾けます」

声を掛ける。



「え?」

「こんなに指が痛くなるまで練習したんだもの。大丈夫です」



不安そうな千賀さんに精一杯笑う。



「指はもう覚えてるはずだから、落ち着いて歌う人をちゃんと見て。あと、千賀さんは集中すると息忘れがちだからリズムに合わせて吸って、吸って、吐いて、吐いて」

曲のリズムに近いテンポでマッサージしながら話すと

「……うん」

千賀さんの手が温かくなってくる。



「ほら、もう成功する気しかしないでしょ?」

聞いてみると

「…うんっ」

千賀さんが微笑む。



そして結果
千賀さんは完璧な演奏をした。

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りさ - 続き楽しみにしてます(*^-^*) (2022年3月14日 3時) (レス) @page48 id: 14edd87e20 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 続き待ってます(*^-^*) (2022年3月4日 2時) (レス) @page44 id: 5e6481142e (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 続き待ってます(*^-^*) (2022年1月28日 1時) (レス) @page40 id: 66fc43380a (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 続き待ってます(*^-^*) (2022年1月18日 2時) (レス) @page40 id: 053d1fe70b (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 続き待ってます(*^-^*) (2022年1月4日 3時) (レス) @page40 id: 1a8a7fd8f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shizu | 作成日時:2021年3月3日 18時

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