すぐ近くにいる another story 7

シロツメクサ Ki -side K- 28 ページ27

半ば強引に
Aさんちでご飯を食べる。

しじみ汁は
やっぱり美味しくて。



「んーーっ！めっちゃウマいーっ！！」

「…そこまで感動されると簡単過ぎて逆に申し訳ないんだけど」



感動を噛み締めてる俺にAさんは苦笑いしてる。



Aさんの部屋は
ものすごくシンプル。

テレビがプロジェクターになってて
壁一面をスクリーンにしてる。

ちょっといいスピーカーはBluetoothでつないでる。

すげーオシャレ。



部屋はよく言えばシンプルで悪く言えば殺風景。

ソファもない。
本棚代わりの小さい棚がいくつかあるだけ。



まるで
いつでも居なくなれます、って言ってるみたいで
何だか不安になる。



ただ、とにかくオシャレ。

いいなー、俺もこーしよっかな。



Aさんがサブスクで好きなの見ていいって言うから映画を見ることにした。

ラブストーリーは気まずいし
アクションだと派手だと落ち着かないしメシ時に微妙かなと思って
一時期話題になったコメディを選んだ。



見始めてしばらくして
あ、これ映画終わるまで帰らなくていいって事？
って気づいたら
もう少し長い映画選べば良かったって思っちゃった。



映画を見ながらお弁当を食べて
食べ終わって少しすると

「何か飲む？」

Aさんが聞いてくる。



「ビール、酎ハイ、ウイスキー、焼酎ならあるよ」

「え、そんなにあんの？」

「私も飲むからね。何飲む？」

お弁当の空き容器をAさんが片付けてるから
俺も片付けながら

「んー、明日仕事だし焼酎水割り」

立ち上がって作ろうとしたら

「映画見てるでしょ？私作るよ」

Aさんが俺の分のお弁当の空き容器を持って立ち上がる。



「え、でも」

「大丈夫だよー、気にしないで」



少しして自分の分も水割りを持って戻ってきたAさん。
作ってくれた水割りはものすごくのみやし
お酒の量も適量だった。
濃すぎず薄すぎず。



「…うーまっ」

「大袈裟だよ」



クスクス笑うAさん。

その笑顔がめちゃくちゃ可愛くて
ズキュン、と心臓が音を立てた気がした。

ここまで人の笑顔にドキッとした事がなくて
しばらくAさんの顔が見れない。



ヤバい。

初めてかも、こんなきもち。



映画は
コメディだと思ってたけど
後半は家族をテーマにした感動的な話だった。



なんだかどんどんいい話になってきて
泣きそうになってくる。



泣くのはカッコ悪いなと思って
必死に我慢した。

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