この想いの結末は ４

呼んでみてよ ページ43

じゃれあってたらまた信号が青に変わる。

どさくさに紛れてAちゃんの手を取ると脇に挟んだ。


「…もうほっぺ触るの禁止っ！」

「えーー」

「『えーー』じゃないからね！」

「はぁーーい」


ものすごく不満そうに返事をするAちゃん。

Aちゃんの手を腕で挟んでるから少しだけ距離が近い。


「で、いつ見つけたの？」

「昨日の朝」

「え！？」

「朝早くにキャリー引いて颯爽と歩いてるの見たよ」

「あー、お参り行く前だ！」


楽しそうに言うAちゃん。



「声掛けてくれれば良かったのに」

「いや俺あの時Aちゃんが東京に居てパニックだったからね？」

「あ、そっか」


呑気なAちゃんに笑う。

ホントにもう。


「あの絵馬ねー、住職さんが時間前だけどお店開けてくれたから書けたんだよ」

「へぇー」

「…なんか緊張して『藤ヶ谷太輔』って書けなくて」

「それで『たいぴー』だったのね」


絵馬なのに『たいぴー』なのは気になった。
Aちゃんらしくていいな、とは思ったけど。



「でもGoogleにはあだ名でもおっけーって…」

「ね、呼んでみてよ」

1度Aちゃんの口から聞いてみたい。

「…え？」

「『太輔』って」

「無理無理無理」

全力で否定された。

「えー…」



俺はあからさまに不満なのを全面に出す。



「無理だって。文字書くので無理なんだし」

「いいじゃん、LINEでは言ってくれたじゃん」

一度『おやすみ太輔』って言ってくれたのに。

「そーだけど…」

ものすごく困ってるAちゃん。



そうこうしてたらトンネルに入る。

…そういえばAちゃんちに行くのに川と山越えるって言ってたな。

大きな川は越えた。
となると、これが山なのかな。



時計を見ると23:45。


「Aちゃんちまであとどれくらい？」

「えっ？…あー、あと10分しないくらい」


話題が変わってホッとしてる様子のAちゃん。


あと10分か。

「Aちゃんちの周り、車停められるとこある？停めても危なくない？」

「うん、大丈夫」

頷くAちゃん。



なら大丈夫かな。


今日のメインイベントはドライブじゃなくてこっちだから。



「あの絵馬さー、ホントに嬉しかったよ」

「ホント？」

「うん、電話でも言ったけど覚えてないみたいだから」

「…ごめんね」

俺が言うと俯くAちゃん。

シュンとして可愛いくて笑っちゃう。


ちょうど信号待ちになったから頭を撫でた。

あー可愛い。

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