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妹。F -side you- 36 ページ8

「ね、見てこれ」

合格発表日があった日。
たい兄が
トースターを新しくした。



「どうしたの?」

「コレね、トーストがものすごく美味しくなるんだって」

「え?ただのトースターでしょ?」



見た目オシャレだけど
ただのパンがそんなに変わる?

不思議そうな私をよそに
たい兄がニコニコしながらパン焼く。

あまり期待してなかったけど
焼きあがったパンをたい兄が割る。



そして私の口元にパンを近づけて

「ほら、あーん」

たい兄が言う。



こんなに近いのも久しぶりだし
『あーん』とかしばらくしてない。



少しだけドキッとした。

でもダメだから。



久しぶりの感情に慌ててフタをして
口を開ける。



たい兄がパンを私の口に入れてくれる。



確かにパンは美味しかった。

いつものパンなのにカリッとして中がフワフワで。



でもそれより

「ね!いつものパンなのに違うでしょ?」

嬉しそうに笑うたい兄の笑顔の方が嬉しくて。



試験勉強に必死だったし
たい兄の顔を必要以上に見ないようにしてたから
こんなに楽しそうで優しい笑顔を見るのが久しぶりで。



声を出したら泣きそうだった。

何気ないたい兄の笑顔をきっかけに
たい兄の事が好きな気持ちが溢れてきちゃう。



ただ頷くと

「良かったー!Aパン好きじゃん?これで焼いたら美味しいってテレビでやってて欲しくなっちゃったんだよねー」

たい兄がものすごく嬉しそうに笑ってる。



私のためとか。

何でそんな事してくれちゃうの?
もうあと少ししか一緒にいないのに。



たい兄はやっぱりたい兄だ。

妹のために。
純粋に私の喜ぶ事をしてくれちゃう。



私の中で何かが弾けた。



それなら最後にたい兄にめちゃくちゃ甘えよう。

たい兄に『可愛い妹がいたんだよ』って思ってもらえるように。



これを最後に
たい兄の前には現れないようにしよう。

それが私に出来る
最後の『妹』だから。



「マーガリンだけ塗ってみたい」

顔を見られないように冷蔵庫に向かうと

「おっ!いいね」

たい兄が嬉しそうな声で。



マーガリンを持って深呼吸する。



私は『妹』だよ。

たい兄の妹だから。



振り返って

「たい兄、私が塗ってあげるっ」

精一杯笑う。



たい兄がものすごく嬉しそうに

「お、ありがと」

笑ってくれる。



ほら、たい兄が求めてるのは『妹』の私。



それなら最後に
ものすごく『妹』しよう。



たい兄に『妹』がいた事
覚えててもらおう。

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shizu(プロフ) - りーちゃんさん» コメントありがとうございます!気づいてなくてごめんなさい。最近更新頑張ってますのでまた読みに来てください。 (2021年2月6日 12時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
りーちゃん(プロフ) - shizuさんのお話、ほんとどれも大好きです。また更新楽しみにしてます♪ (2021年2月3日 22時) (レス) id: 08f03cdb41 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shizu | 作成日時:2021年1月28日 12時

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