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シロツメクサ Ki 24 ページ47

菊池様が
逃げるように帰った後。

「おかえり」

お店の時みたいに不機嫌な声で
北山さんが言う。

「ただい…」

最後の言葉を発する前に
私は北山さんの腕の中に居た。



「おかえり」

もう一度、北山さんが言う。

「…待ってた、ずーっと」

北山さんが切なそうに言うから

「ごめんなさい」

避けてたのがダメだったのがわかるから謝ると



「……寂しかった」



ポツリと北山さんが呟いた。



…例の同級生の妹って子はどうしたの?

聞こうとしたらマンションから人が出てきて。



さすがにここはちょっと、ってお互い気づく。



「…帰ろ」

声をかけると

「ん」

北山さんが腕を解いて私の手を握る。



その手を繋いだ瞬間。

フワッと何かが過ぎった気がしたけど
それが何かは思い出せなくて。



いつものようにシャワーを浴びて
北山さんの家に行くと
ベッドにペンギンのぬいぐるみ?抱きぐるみ?がいた。



「…どうしたの?これ」

「Aさんの代わり」



ムスッとして北山さんが言う。

ちょっとだけ、北山さんが赤くなってるのも含めて可愛かった。



ペンギンか。

「私、好き。ペンギン」

水族館でも一番好きなのはペンギンだった。
小さい頃からペンギンの物は多い。

北山さんのぬいぐるみを抱えてみると
ものすごく抱き心地がいい。



「…ペンギンはまた今度」

北山さんは私の腕の中のペンギンを抜き取ると

「連絡先教えて」

自分のスマホを手にしてる。



「え?」

「今日みたいな事があったら電話してきて。夜中でもいいし」



北山さんは私を見つめて

「……怖かったでしょ?」

聞いてくるから。



頷くと北山さんの腕の中にまた包まれた。



北山さんは長いこと私を抱き締めていた。

まるで私の存在を確かめるように
たまに体を撫でながら。



「やっぱり、Aさんがいい」

ポツリと北山さんが呟く。



「お友達の妹はいいの?」

「ん?……あぁ、Aの事?」



心臓が跳ねる。

同じ名前だったんだ。
それで、私の名前呼んだんだ。



「結局またキューピットしちゃった。これでAって子のキューピット4人目だよ」

北山さんは笑う。



「Aって名前の子に縁がないみたい」



そう言って抱き締める北山さんだけど。



いま貴方が抱き締めてる子の名前も「A」って言うんだよ。



「Aさん、名前なんて言うの?」

北山さんに聞かれて。



この流れで
本当のこと言える訳ないでしょうが。



「ヒロだよ」

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shizu(プロフ) - りーちゃんさん» コメントありがとうございます!気づいてなくてごめんなさい。最近更新頑張ってますのでまた読みに来てください。 (2021年2月6日 12時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
りーちゃん(プロフ) - shizuさんのお話、ほんとどれも大好きです。また更新楽しみにしてます♪ (2021年2月3日 22時) (レス) id: 08f03cdb41 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shizu | 作成日時:2021年1月28日 12時

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