太陽の当たる場所 7

Mission of Love 17 side 2 ページ26

大泣きしたAに
運転させるわけにいかないし
旅館の場所は分かってるから運転を交代する。

泣き疲れたのかAは少ししたら眠そうで。



「寝ていいよ」

声を掛けるけど

「寝ない」

弱々しく首を振るAは目が半分閉じてて。



カクカク頭が動き出したからBGMのボリュームを下げると

「寝ないもん…」

って小さく言ってそのままスーッと寝ちゃう。



今日は明るいし寝顔が丸見えだから
路肩に車を止めるとあまり音を鳴らさないようにスマホのスピーカーを塞いでAの写真を撮る。



カシャッ



まぁまぁ音がするけどAの眠りは相当深いらしくて
全然起きない。

それだけ自分の隣が安心出来る場所にもなってるってことと
寝顔を撮れたの嬉しくて
相当ニヤニヤして運転してたと思う。

旅館に着いてAを起こすとものすごく慌てて
寝顔をからかったらめちゃくちゃ不満そう。



可愛いのに。



だから可愛いって思ってる事も伝えても
まだAは不満そうだから

「どんな顔もAだから。俺は全部好き」

ちゃんと伝えてみた。



そしたらめちゃくちゃ嬉しそうだから
あ、やっぱちゃんと言葉にするのって大事だな
って思う。



でもやっぱり照れくさいから荷物を持って先に歩きはじめた。



ここは広い敷地の中に泊まる所が1つずつある感じのところ。
チェックインもチェックアウトも部屋に来てくれるし部屋に温泉もあるし
部屋で食事も出来るから誰にも会わずに済むから助かる。



チェックインの時に前にお世話になった女将さんが対応してくれた。
女将さんが支払いを確認してくれてる間に

「どうした？」

緊張してガチガチなAに声をかけると

「…素敵なところだな、と思って」

って小さく答えてるけど。
顔とのギャップが笑える。

「ありがとうございます」

女将さんがニッコリAに笑いかけて
Aも笑ってペコッとして少しAの顔が緩む。



部屋の案内を終えて女将さんが部屋を出ると

「いつもこんなところ泊まるの？」

キョロキョロして聞いてくる。

「違うよ、普通のところも泊まるよ」

毎回こんなにいい所泊まれないって！



「私、いくら払えばいい？」

「だからホワイトデーでいいって」

「でも…」



Aが渋るから

「それなら焼きそばフリーパスがいい」

「え？」

「焼きそば食べたい時に作ってくれる権利。これからずっと」



『ずっと』を強調して言うと
嬉しそうにAが笑ってくれた。



…良かった。

Mission of Love 18→←Mission of Love 17

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す